ミッチェル408は、フランスのミッチェル社から発売されていた、小型スピニングリールです。
この70年代のものは、現代の日本でも愛用者が多いモデルです。その人気の理由は、どこにあるのでしょうか。
スパイラルべべルギア
70年代のミッチェル408には、スパイラルべべルギアというものが使われています。
正直、私には、これがどういう物なのか、全く理解できていないのですが、80年代の真鍮製フェースギアのモデルと比べて、かなり回転が滑らかであることは確かです。おそらく耐久性も上回っているはずです。
このギアを作るためには、結構なコストがかかったらしく、会社が傾き始めた80年代以降は、採用されなくなってしまいました。
ですから、ミッチェルの品質が良かった時代を、象徴しているものとも言えるかもしれません。
訳がわからない摺動機構、プラナマティック。
70年代の408には、プラナマティックという謎の機構が組み込まれています。
これは、通常のスピニングリールのように、ハンドルを回すとスプールが上下に単純に動くのとは違い、一見不規則にも見える複雑な上下動をするものです。
実際にハンドルを回してみてもらわないと理解してもらえないほど、ちょっと複雑な動きです。
この動きの結果、ラインはスプールの中央部が盛り上がったような形状に巻かれることになります。
ライントラブルを防いだり、飛距離が伸びるといった利点があるようですが、正直、何でこんなものを作ったのか、凡人の私には理解できません。フランスの天才が設計した謎の機構なのではないでしょうか。
この機構を知らない人には、故障していると思われてしまうこともあるようです。
「変な動きをします」「ラインが変に巻けます」などと書かれて、ジャンク品としてオークションに出品されているのを目にしたことがあります。
手で無理矢理ベールを返されて壊されているものもあったりと、どうもミッチェルをはじめとしたインスプールリールというものは、人々に良く理解されず可哀想な扱いを受けていることが、少なくありません。
そんな姿を見ると、実際に使って魚を釣ってやり救ってやりたいと思ってしまうのは、私だけなのでしょうか。
全体的な完成度も高い。
小さなリールですが、手にしてみると、しっかりと丁寧に作られたのものだと実感できるものです。
80年代のものは、機種名の表示がバッチが採用されていて安っぽさがありますが、この時代のものは、しっかりと刻印で刻まれて高級感があります。
だからと言って、このリールが売られていた当時は、ヨーロッパでは高級品ではなく普及品として誰でも買えるようなものであったはずです。
普通に良いものが、コツコツが作られていた時代だったのでしょう。
それは、何十年もたった今でも十分に釣りに使えるもので、見た目は現代のリールよりも、ずっと美しいものです。
こういったところに、今でもこのリールが日本でマニアックな人気を得ている理由があるのかもしれません。
時代の流れから考えれば、生涯に渡って使え、釣りをする上で必要な基本的な性能を充たしていて、美しい外観を誇る、このようなリールが作られることは、もうこの先はまずないことでしょう。
古き良き時代に思いをはせつつ、大切に使いながら、せめて自分が死ぬまでは実際に魚を釣り続けたいものです。
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