釣りにゃんだろう

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『ケン、フィッシュオン!』 ケンクラフトと千夜釣行。

伝説のケンクラフト。

90年代の釣りバブル期を経験した方なら、ケンクラフトという、今は忘れ去られつつあるブランドを、よくご存じなのではないでしょうか。

現在の3倍ほどの釣り人口が居たというあの時代、上州屋が当時の社長の息子であった鈴木健一(現社長)の名前を使い、主にルアーやフライ用品を販売するブランドとして立ち上げたのがケンクラフト(KEN Craft)です。

 

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鈴木健一氏は、何故かケン・スズキと名乗り日系人っぽくなってみたりと、なかなか面白い戦略をとっていました。

 

当時、その出自が上州屋であったり、他社製品に似たものが多かったり、安売りされることが多かったせいか、ケンクラフトは、かなりバカにされた存在であったようです。

しかし、当時子供だった私にはそれなりに高価なものに見えましたし、大人達が笑いものにしていたとは、思いもしていませんでした。

そのように私が思っていた原因として、やたらお洒落なテレビ番組「千夜釣行」の影響が大きいと思われます。

 

 

千夜釣行

youtu.be

千夜釣行は、テレビ東京系列で放送されていた上州屋提供の釣り番組です。


千夜釣行は、鈴木健一氏や上州屋の店員や関係者、女性タレント、著名な釣り人などが出演し、基本的には、ケンクラフトなどの自社製品を使って釣りをする番組でした。
(アメリカで現地のビッグベイトのようなもので、巨大なバスを釣って、しれっと自社のルアーで釣ったような写真を撮って広告に使っていたりもしましたが…)

そして、この釣りがなかなかリアルなものでした。

他の釣り番組のように「うりゃあ」と景気よく釣りまくるなんてことは、まずありません。
シブい状況であることがほとんどで、釣れれば御の字といった感じです。

つまり、一般人の日常の釣りのようなことも多々あったのです。

これだけだと、魚は釣れないし、製品の宣伝にもならず、番組として成り立たない気もしますが、ここからか千夜釣行の他の番組とは違うところです。

 

 

映像は一級品。

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千夜釣行が、他の釣り番組とは違っていたのは、何よりも映像のレベルが高いことでした。

美しい映像と森篤夫氏の渋いナレーション
音楽も雰囲気のある洋楽の名曲ばかりで、編集も素晴らしい。
現在まで続く、無駄に騒ぐ下品な釣り番組とは、全く違う路線を行っていました。

ですから、たとえ魚があまり釣れなくても、番組自体が作品として成り立っていて、妙に感動させられてしまうのです。
「釣りロマン」より、ずっとこっちの方がロマンチックでした。

 

例えば、こちらにエンディングテーマであった曲があります。

Atlantic Starr Along the way - YouTube

そのコメント欄には、「子供の頃、この曲が流れるシーンでよく泣いてしまったほど印象に残っていた」というような言葉もあります。

ザ・フィッシングやビッグフィッシングを見て、感動して泣く子が果たしているでしょうか?
それほど千夜釣行は、映像作品としてレベルが高いものだったのです。


千夜釣行を製作していた映像会社は、なかなかの会社であったと思われます。

海外のフライフィッシングのビデオなどを製作していたとの情報もありました。

また、そのような会社だからか、地上波にしてはフライフィッシングが取り上げられる機会が多かった気がします。

有名なタイヤーだという、レネ・ハロップという人が出演することがよくありました。
彼のモデルというロッドが、ケンクラフトから発売もされていました。


このような番組を、素直な心で見ていた私には、ケンクラフトの製品がバカにされているとは、当時はとても思いもしなかったのです。

 

 

ケンクラフトは本当にダメだったのか?

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当時の大人達から低かったというケンクラフトの評価は、一部の人々の間では覆りつつもあるようです。

今になって振りかえると、意外といい物があったり、結構良いルアーがあったりと、使えるものが多いそうです。
しかも、現在では、ケンクラフトのものは、中古や新古で格安で手に入りますから、なかなかの狙い目かもしれません。

釣り人の大半には物の本質を見抜く能力がなく、単にブランドイメージなどで物を買っているというのは、今も昔も変わらなかったようですね。

 

『水・光・風・人・愛。
この地球での幾万の出会い、幾千の縁に感謝して、今日もまた千夜釣行。』