トラウトフィッシングを始めるにも、道外から遠征をするにも最適な大地、北海道。
ここでは、魚種など基本的な情報について、まとめてお伝えしていきたいと思います。
北海道のトラウトフィッシングの実情。
北海道は、日本の中では釣りをするのに、比較的恵まれた環境にあります。特にトラウトフィッシングの魚種、魚の量、ポイントの豊富さにおいて、本州とは雲泥の差があると言えるでしょう。
例えば、本州の渓流では、放流されたヤマメを高い入漁料を支払い解禁日に奪い合うようにして釣り切り、ろくに再生産も行われていないような川が、いくらでもあるのではないでしょうか。
一方で、北海道では、ヤマメはそこらへんの川で、狙ってもいないのにわらわらと群れてきて、次から次へと釣れてしまう厄介者であることも多々あります。
本州では釣れる確率がかなり低く、姿を見るのが難しい魚であるサクラマスも、北海道では川で頻繁に掛かってしまい、密漁にならないようにさっさと逃がさねばならない外道のような存在でもあります。極端に言ってしまうと、本州のウグイのような存在と見なされることさえもあります。
北海道も、当然日本ですので、決して自然が豊かとは言えません。開発の行き届いていない手付かずの川などは滅多に見当たらず、魚達にとっては楽園とは言えないような厳しい状況です。それでも、まだまだこのような恵まれた状況が、かろうじて保たれているのです。
このような環境ですから、トラウトフィッシングを初めてみたい人や、道外より恵まれた環境での釣りを体験しに行きたい人には、最適な土地と言えるでしょう。
今回は、そんな北海道でどんなトラウトが狙えるのか、順番に見ていきましょう。
1.イトウ
北海道、南千島、サハリン、シベリア東部に生息する超大型の魚です。
北海道では、主に道北や道東に生息しています。
1メートル以上に成長し、現在でも130センチくらいまでなら、釣った!見た!という話を、ちらほらと聞きます。
産卵は川の上流部で行うものの、生息域は中流、下流、汽水域、海と多彩です。安定して繁殖するためには、川の全域の環境が保たれている必要があります。ですから、開発による影響を受けやすく、過去には北海道全域から東北にも生息していたものの、現在では生息域は北海道のごく一部に限られ、絶滅危惧種とされています。
このような種ですから、「幻の魚」と呼ばれ、釣るのは難しいと思われるかもしれませんが、釣り人目線から見てみると、実際にはそこまで珍しい魚ではありません。
有名な釣り場に良いシーズンに行き、サイズを問わなければ、適切な例えではないかもしれませんが、本州で岸からブラックバスを釣るくらいの難易度と言えるでしょう。
2 アメマス(エゾイワナ)
簡単に言うと北海道のイワナのことです。川から海や湖に下ったものをアメマス、生涯を川で過ごしたものをエゾイワナと呼びます。
川と海とを行き来するアメマスは大きく育ち、80センチ以上に達することもあります。
道南では冬に海岸から大型を狙う「海アメ」釣りが盛んです。川でのアメマス釣りは主に道東で盛んです。
ほぼ放流等は行われておらず、サケの卵を食べる害魚として人間から迫害を受けたりもしてもしぶとく逞しく命を繋ぐ、北海道のトラウトの代表選手のような存在です。
3 オショロコマ
小型のイワナの仲間です。北米では、この魚が海に下り大型化し、ドリーバーデンと呼ばれています。
最大でも30センチ程度と小型ながら、独特の色彩豊かで山の宝石と呼ばれている美しさは、一見の価値があります。生息地によって、その色彩も違いを見せるのも、釣りをする上では魅力的です。
道北や道東の主に源流部に生息し、特に知床半島には豊富に生息しています。
然別湖には、オショロコマが湖に閉じ込められ独自の進化を遂げた、透き通るような美しさのミヤベイワナという天然記念物の魚が生息しています。この魚は、時期と人数が限定されますが、解禁されている期間に釣ることができます。
4 ニジマス
釣り堀でお馴染みの北米原産のニジマスが、北海道では放流されたものが野生化したり、自然繁殖しています。北海道では、最大80センチほどまでに大型化します。
大正時代から現代まで道内の湖や川に広く放流されてきましたが、外来種であり、当然自然環境に影響がないわけではないので、昨今は放流されることが減っています。
突っ走ったり、ジャンプをしたり、とにかく強烈なファイトをするので、釣り人には人気があります。
本州でニジマスを釣るようなタックルを持ってきた人が、為す術なくラインをぶっ千切られてしまうという話は、「釣り人あるある」でしょう。
北米では、ニジマスが海に下り巨大化したものを、スチールヘッドと呼びますが、このような魚が、北海道でも道央の太平洋側の河川の河口部に、冬から春にかけて姿を現すと言われています。
また、夏にも冬よりは小型ながら、海から遡上するものがいるという情報があります。
実際に狙って釣っている人もいるので、興味のある方はチャレンジしてみても面白いのではないでしょうか。
5 サクラマス(ヤマメ)
その美しさと俊敏さから、日本を代表する渓流魚のヤマメ。これが海に下ったものをサクラマスと呼びます。また湖を海の代わりにして姿を変えたものも、サクラマスと呼ばれています。
サクラマスは、水産資源として管理されており、北海道の河川内での捕獲は法律で禁止されています。
ですから、狙って釣りをするなら、海で狙うか、または湖のものとなります。
海で釣る場合は、冬から春にかけて、道南の日本海側で釣るのが一般的です。
河川内で禁漁とは言っても、他の魚を狙っていて、釣れてしまうこともあるので、その場合は速やかにリリースしましょう。
過去には「釣れちゃいました」というように、川での釣果が本に載るようなおおらかな時代もありましたが、昨今ではSNS等に写真をアップしただけでも炎上した例もあるので、取り扱いには注意が必要です。
ヤマメも、比較的遊漁規則の少ない北海道の中でも、注意が必要な魚です。
道南・道央では4月と5月、道東・道北では5月と6月が禁漁となっています。また周年禁漁の河川もあります。最新の情報をウェブ等で確認しておきましょう。
基本的にヤマメは、寒く餌が少ないなど、生育環境が厳しいほど、川から海に下りサクラマスになると言われています。
ですから、40センチというような大きなヤマメを釣りたければ、温暖な気候の道南や道央を狙うのが一般的です。
6 ブラウントラウト
ヨーロッパ原産のトラウトですが、過去に放流されたものが、北海道でも自然繁殖し定着しています。
シューベルトの鱒という曲は、この魚をモチーフにしたものです。
生態系に悪影響を与えることから、現在では放流されることは減っています。近年では、北海道のブラックバスといった存在になっています。
道央や道南の川に多く生息しています。支笏湖などの湖でも数は少ないながらも、大型が狙えます。
ブラウントラウトが海に下り、川に遡上したものをシートラウトと呼びますが、北海道にもそのようなものが居るとの情報もあります。
ここからの二種はトラウトと言うよりはサーモンなのですが、サケ・マスの仲間であり、北海道ならではの魚なので、一緒に紹介しておきましょう。
7 シロサケ
日本で古くから鮭と呼ばれてきたものです。
昨今は、日本には生息しない銀鮭や太平洋鮭の養殖ものが食べられる機会が多く、日本人とは少し疎遠になりつつあります。
日本の川を旅立ったサケは、オホーツク海、北太平洋、ベーリング海、アラスカ湾などを旅して、2~8年かけて最大で80センチほどになり、9月~11月に日本に帰ってきます。
長旅で鍛えられたパワーは並外れたものがあり、なかなか強烈な引きを味わえます。
河川内での捕獲は、法律で禁止されていますが、忠類川等一部の河川では、事前に申請すると釣獲調査という名目で釣ることができます。年々、手続きが簡略になってきているので、秋に近場を訪れる機会がある場合は、申し込んでおいて損はないでしょう。
また海でも河口規制という、河川ごとに河口の周辺に禁漁エリアが設定されていることが多く、注意が必要です。
このように規制が多い魚ながら、その身やイクラを狙い、北海道では鮭釣りがとても盛んです。
ホームセンターには道具が充実し、海岸にはびっしり竿が立ち並び、場所取りをするロープが張れたり、イクラだけ抜きとり魚を捨てていく人が居るなど、殺伐としか漁のような雰囲気となります。
一見ルアー釣りをしているように見えても、メタルジグを高速で巻き引っ掛け釣りをしている場面も、よく見かけます。
引っ掛け釣りは違法ですが、メタルジグを使うと道具に違法性は無いので、取り締まりは難しいのではないでしょうか。
こんな雰囲気を嫌う良識のある方は、人も少ないがサケも少ないかもしれない場所でのんびりやるか、前述の忠類川で川のサケを狙うのが、得策ではないでしょうか。
8 カラフトマス
名前こそマスですが、50センチほどの小型の鮭の仲間です。鮭缶の鮭に使われていることがあり、食用としても人気があります。
日本では、北海道と東北に
生息し、オホーツク海側に数が多いとされています。
カラフトマスも、シロサケと同じように河川では禁漁、河口規制があるので、基本的には海で釣る魚と考えていいでしょう。
知床半島では、渡船で送ってもらい、車ではアクセスできない場所で釣りを楽しむが盛んです。
河川では、北海道で唯一、申請し許可を得た上で忠類川で釣りをすることができます。川に上った雄は、背中が出っ張り、口が裂け、姿を大きく変えます。
シロサケよりも早く、8月頃から遡上を始めるので、夏から秋が釣りのシーズン
となります。
温暖化の影響なのか、近年は、少なくなったという声を多く聞きます。
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