あなたがもし、イトウという魚を釣ってみようと思った場合、まずは2種類のイトウのどちらを釣るのか選択することとなります。
川のイトウと湖のイトウです。
これらには、どのような違いがあるのか、今回はちょっと考えてみましょう。
川のイトウとダム湖のイトウの違い。
イトウという魚は基本的には川に住んでいて、川と繋がっている沼や海にも行くことがあるものです。
一方で、イトウが元々住んでいた川がせき止められてできたダム湖にも、流入河川で産卵を繰り返し、棲息していることがあります。
有名な場所としては、朱鞠内湖や金山湖があります。
これらは、どちらも天然のイトウには違いありませんが、ちょっと違うものなのかもしれません。
それは、川のイトウは自然の環境の中で暮らしていますが、湖のイトウはダム湖という人工的に作られた環境に陸封されている点です。
川のイトウは、川の上流で生まれ、川を下ったり、時には海にまで降り、非常に広大な範囲を移動して暮らしています。
一方で、湖のイトウは、ダム湖という限られた環境の中に陸封され、なんとか生き残っているものです。
ダム湖というものは、出来た当初は森が沈み、水の富栄養化が進み、プランクトンが増え、魚も増え、魚が巨大化するものです。
しかし、時間が経過するにつれ、その効果はなくなり、水質が変化し、魚が小型化していくものです。
このような不自然な環境で暮らしているイトウは、天然ではあるものの、どこか不自然な生活をしているのではないでしょうか。
イトウがいるダム湖には、ワカサギが人為的に移植されていることが多く、そういったものやウグイなどを食べてイトウは暮らしているのでしょうが、川や海を広範囲に自由に行き来して暮らしている自然の川のイトウとは、かなり生活様式が違うはずです。
このような違いが顕著に表れるのが、イトウのサイズや体型でしょう。
川では、あまり表沙汰にはなりませんが、今でも120センチ~130センチ程度のイトウが毎年釣られています。
1メートル程度のイトウでも、嘘のように太ったものを見かけるものです。
しかし、湖のイトウには、そのような魚は滅多にいませんし、小型化が進んでいる気がします。
ダム湖という人工的に作られた環境は、130センチの魚が毎年釣れるような自然の環境と比べると、不自然でバランスの悪いものなのでしょう。
もしも、ダム湖でも自然の川のイトウのような魚が釣れるようにする方法があるとすれば、イトウの数を減らすか、エサを与えるなど、人為的に操作するしか方法はないと思います。
陸封イトウ?
このような川のイトウと湖のイトウの違いは、川のサクラマスと湖産サクラマスの違いに似ていると思います。
サクラマスは、ヤマメが海に降り、豊富なエサを摂り大きく育ったものです。
しかし、海の代わりにダム湖などに降り、サクラマスに近い状態になるヤマメも居て、これらは湖産サクラマスと呼ばれています。
この二種類の魚は、見た目は似ているものですが、自然の海と比べると栄養のないダム湖で育った湖産サクラマスの方が、ずっと小型であることがほとんどです。
釣り人達は、この二つの魚を明確に違う魚だと思っていますし、湖でしかサクラマスを釣ったことがないのに、「サクラマスを釣ったことがある」と言う人は、まずいないでしょう。
このような考え方は、イトウにも当てはまるのかもしれません。
イトウは、海に降ることがあるため、他の外国のイトウ属の魚達とは少し違う種だと、区別する動きが大きくなってきています。
この考え方に基づけば、サクラマスと同じように、イトウというものは海と繋がった自然の川に居るものであり、ダム湖に居るものは陸封イトウという特殊な別の魚と言うことができるのかもしれません。
釣り人達が、ここまで深く考えているかは分かりませんが、イトウ釣りが大好きでも、ダム湖のイトウには全く興味がないという人も沢山います。
そういった人々は、湖のイトウは湖産サクラマスと同じように、違う種類の魚だと認識しているのかもしれません。
こういった考え方の釣り人に、ダム湖でイトウを釣ってきたと言っても、「それはイトウじゃない」と言われてしまうかもしれません。
私個人としては、川のイトウも湖のイトウも、どちらも希少であり、精一杯生きているものを釣らせてもらっているのですから、あまり区別はせずに、同じように釣れれば喜び、大切に扱ってあげれば良いのではないかと思っています。
しかし、魚の分類や釣り人の考え方からすれば、川のイトウと湖のイトウは、似て非なるものと言われても仕方がないものなのかもしれません。