ゾンカーというフライがあります。
ウサギなどの毛付きの皮をフックにつけて、適当なものでボディをつくったりウェイトを巻けば完成という、超お手軽なものです。
お手軽なものですが、このフライはフィッシュイーターに対しては、もの凄い威力を発揮して、エサ並みに釣れるものとなっています。
ゾンカー=エサ説。
ゾンカーがエサ並みに釣れる様子は、イトウなど川の岸に居ついている魚を釣ると、よく確認することができます。
「ここら辺に、いつもイトウが住んでるよなぁ」という場所に、ポイッとゾンカーを投入し、そのままゆっくりと沈めていきます。
そうすると、フラーっとイトウが住み処から出てきて、パクッと食いつくことがあります。(当然、見切られることもありますが)
ただ漂わせているだけで、パクッと魚が食いついてしまうとは、なんともエサ釣りのような感覚です。
これは、全く不思議なことではないと、私は思います。
ゾンカーの素材である動物の皮や毛というものは、魚が食べようと思えば食べられる、限りなくエサに近いものなのではないでしょうか。
ですから、言ってしまえば、腐らないミミズのようなものだと、私は思っています。
流れの中でも最強。
他にも、ゾンカーがエサ並みに釣れる場面を、私は見たことがあります。
ある日、モンゴルの川で、その気になれば130センチ以上のタイメンを必ず出すことができるスーパーな現地のガイドと遊んでいました。
その時は、どうにも魚の反応が悪く、一緒にいたルアーで釣りをしていた若者には、なかなか魚が釣れませんでした。
そこでスーパーガイドは、ポケットの中からビニール袋を取り出し、「これを使おう」と袋の中からゾンカーと中通し重りを取り出しました。
これを若者のルアータックルのラインの先に取り付け、適当に川に投げさせました。
結構流れの強い川ですから、中通し重りがついていても、いい感じにスイングしています。
すると、さっきまでルアーでは何も釣れなかった川から、一発で魚が釣れました。
ルアーのようにリトリーブしても釣れるようで、適当に川にゾンカーを投げて流したり巻いたりするだけで、しばらく大小の魚が入れ食い状態となりました。
どうもこの方法は、ルアーで魚の食いが渋い時の最終手段のようです。
モンゴルの川ではエサでタイメンを釣ることは法律で禁止されているので、法律を守りつつルアータックルでエサ釣り並みに魚を釣るという方法が、このゾンカー+中通し重りという作戦のようです。
魚が沢山居る川であるという点は、日本とは少し違うかもしれませんが、それにしてもその釣れっぷりは、やはりエサ並みであると言えると私は思いました。
ゾンカーはフライではないのか。
とてもこだわりが強いフライフィッシングをする人の中には、ゾンカーなどのストリーマー系のものは、フライと認めない人もいるようです。
確かに、この腐らないミミズのようなものと、昆虫を模した緻密なドライフライや美しいサーモンフライなどを、一緒にしてしまうのが嫌な気持ちは分からないでもない気がします。
しかし、フィッシュイーターであるより大きな魚を、より簡単に釣りたいという気持ちを持つのは、釣り人として当然なことなのではないのでしょうか。
そのための手段としては、かたくなにこだわりを持つよりも、ゾンカーを使うのは、そんなに悪いことではないと思います。
ゾンカーを使えば、比較的簡単に大きな魚が釣れ、一応ドバミミズなどのエサではなく、フライで釣ったという自尊心のようなものも保てるわけですから。
一部の日本のフライフィッシングをする人の中には、あまりに強いこだわりを持ち、自分の釣りの世界を自ら狭めてしまっているような人達がいる気がします。
小さな自分の世界だけで釣りをしているのは居心地の良いものかもしれませんが、外の世界には様々な釣り方や魚が、いくらでも溢れているのですから、少し勿体ないような気もします。
ゾンカーはエサ並みに釣れますが、エサではないわけですし、まあそう意固地にならずに、こういったフライを使う釣りに手を出したことない方も、一度使ってみてはいかがでしょうか。