釣りにゃんだろう

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歩いて帰ろう。

寒さで途中に目を覚ますこともなく、すぐに4時をになる。
寒くないのは、考えてみれば当然なのだ。小屋が少しボロいというだけで、いつも寝ている環境と大差がないのだから。

朝マズメにもうひと勝負と思っていたが、なかなか一歩が踏み出せない。
足の踵の傷が、かなり腐ってきているようで、ウェーディングブーツを履く勇気が出ないのだ。
寝袋の中は、傷が膿んだような、なんだかヤバイ匂いで満ちている。

 

一時間ほど悩んでいると、ハンサム君が目を覚まして釣りの準備をし始めたので、僕も勇気を出して、ウェーダーとブーツを持って小屋の外に出た。
悲鳴を上げそうになりながらもブーツを履いて、昨日からよく魚の掛かるポイントを攻めてみる。

少し勇気を出すのが遅すぎたようた。すっかり明るくなってしまっている。

 

時折魚は釣れるのだが、60センチほどのレノックばかりだ。
釣っては逃がし、釣ってはバラしているうちに、諦めモードになってきてしまった。何よりも足が痛くて、水中を歩くのがしんどくてたまらない。

8時を過ぎたので、もう充分やっただろうと思って、岸に上がりブーツを脱いで、持ってきていたサンダルを履く。
ちょうど良い具合にベンチのように倒れている流木に座り、遅く起きてきたルームメイトの釣りを眺める。

 

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ドッボンと仕掛けが投げ込まれ、ゆっくりとラインが下流に流れていく。
グッと竿が曲がって、魚が来たと言う。

ちょっとのファイト時間で寄せてきたのは、1メートル少しのタイメンだった。
このサイズや引き具合を見ていると、「昨日バラした魚じゃないかなぁ」と、どうしても思えてきてしまう。

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ルームメイトは、「後ろの景色が写るように、写真を撮ってくれ」と、あまり大きくない魚だが、なんとか目標を達成できて嬉しそうだ。

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魚をリリースしてからしばらくたって、ようやくガイドが起きてきて、火を起こしたり、カップ麺とパンを食べたりする。

さて、これからどうやって帰ろうか。僕は頭を悩ましていた。
もうブーツを履く気には、とてもなれない。そうなると履き物は、ビーチサンダルしか選択肢がない。
ウェーダーを脱ぐと、ちょうど良いことに、先割れのソックスを履いていたので、ビーサンにはピッタリだ。

後はこれで15キロ、タイガの森を歩けるかどうかだ。

ビーサンなら、踵は全く痛くなくて走れるくらいなので、問題はビーサンで劣悪な足元に対応できるか、このダイソービーサンが壊れずに済むのかである。

 

ビーサンで行く覚悟を決め、みんなで片付けを進めていても、ルームメイトは一人釣りをしていた。

やはり、ここまで小遠征をしてきたのに、1メートルちょっとの魚が1匹という結果には、全く納得できていないのだろう。
全員の釣果を合わせても、2匹だけなのだから、貧果としか考えられない。

もうすっかりみんなが準備を終えて、「ぼちぼち、帰ろうぜ」という雰囲気になった頃、ようやくルームメイトは釣りを切り上げてきた。
それから、何事かガイドやハンサム君と相談を始めた。