釣りにゃんだろう

猫のように気まぐれに 独断と偏見に満ちた釣り情報をお届け

ビーサンでタイガの森を踏破すること。

釣りにも飽きてしまい、また木陰で虫に喰われながら、ゴロゴロする時間が始まる。
まだ帰り道の半分も来てないのだし、動き出した方が良い気もするけれど、夜の9時過ぎまでは充分に明るいので、そう急ぐ必要もない気もする。

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午後3時近くになって、ようやく出発することになる。ハンサム君の父親が、何やら近道をガイドから聞いているようだ。

蚊に囲まれるようにして、また森の中をビーサンに短パン姿で歩いていく。
ほどなくして、ゴーという川の流れる音が聞こえてきて、目の前に渓流といった雰囲気の結構な水量の支流が現れた。
水深が深い所は余裕で腰までありそうだし、大きな岩の間を白泡をたてて、勢い良く水が流れている。

 

これをビーサンと短パンで渡るのか。お父様もジャージにスニーカー履きだぞ。
と、戸惑っていると、荷物を載せた馬で先行していたモンゴル人スタッフが対岸に現れて、「ちょっと上流に行ってみな」と言ってくれた。

その言葉に従って、川沿いの繁みを上流に向かって進むと、なるほど、橋があった。
橋と言っても、木が一本倒れて、自然にできたようなものだ。

この丸い平均台のような橋を、足元はビーサンで、背中にはウェーダーや防寒着をパンパンに詰めたリュックを背負い、片手にはロッドを持っているという状態で渡るのは、なかなか恐ろしい。

手ぶらで靴を履いていれば、トトトッと走り抜けられそうなものだが、ビーサンは脱げそうになるし、背中の荷物で体が振られるしで、ちょっとした難所になってしまう。

なんともカッコ悪いが、よつん這いに近い情けない格好で、丸太橋を渡る。
それをまた面白そうに、お父様が声援を送りながら、スマホで動画を撮っていたりする。

川に落ちることもなく、平均台丸太橋を渡りきって、小道に復帰すると、それを見届けた馬に乗ったスタッフが、また森の中に消えていった。

 

 

とにかく、汗が止まらない暑さだけれど、進むしかない。
途中、膝のあたりを倒木にぶつけ血が流れてきて、そこに虫がたかってくるが、進むしかない。

何度か小川で水を飲みながら進むと、近道の分かれ道らしき場所で、また馬に乗ったスタッフが待っていてくれた。
馬の道は、山に入っていくが、ここから草地の斜面をまっすぐ進むとショートカットできるらしい。

この近道が、またビーサンにはしんどかった。
深い草の中をビーサンが脱げないように進むというのは、森の中よりずっと煩わしい。
しかも、かなりの急斜面を斜めに下りながら進むので、さらに煩わしい。

若干、お父様から遅れ気味になりながら、必死でついていく。

 

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その草地斜面地獄を乗りきり、山道に復帰すると、前方に巨大な岩場が見えてきた。
この岩場には、何日か前に釣りに来たことごあるので、もう一時間ほどでキャンプに辿りつくことが分かってくる。

 

その岩場まで来ると、お父様はちょっと釣りをしようと言い出した。

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僕が預かっていたサルモのルアーをリュックから出して手渡すと、やはり一投で50センチほどのレノックが釣れた。
その後も、たて続けに2匹のレノックが釣れた。
なんだかもう、この川も凄ければ、このルアーも凄い気がしてくる。
30センチの魚が貴重な日本の渓流というのは、本来はとても釣りに向いている環境ではないのだろうな、と思えてくる。

 

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岩山を登り降りして越えると、あとは干からびた草地のような開けた道を進む。
二人とも暑さにやられて、トボトボと歩くペースが落ちてくる。

やがて、眼下の草原に懐かしいキャンプ地が見てえきた。
インテル ホテル!」
と、その質素な小屋の群を指差して、お父様は冗談を言う。

笑いながら歩くペースを上げて、キャンプ地まで一気に下っていく。
外のベンチでは、今日も飲み仲間達が、いつもの平和な午後ように酒を飲んでいて、大声を上げて出迎えてくれた。

何はともあれ、帰ってきたのだ。
ろくな魚は釣れなかったけれど。