高級なリールほど、ドラグが優れているものです。
微調整が効いて、セットした力でスムーズに確実にラインが引き出される、現代のリールではそういった物が当たり前になっています。
しかし、実はリールのドラグというものは、構造上常に一定の力で作動するわけではないのです。
これは、どんなに高級なリールにも当てはまることです。
スプール径とドラグの関係。
スプールの直径とドラグが作動しラインが引き出される力というのは、密接な関係があります。
スプール径が小さくなるほど、ラインを引き出すためには大きな力が必要になります。
これは、ラインをいっぱい巻いている時とあまり巻いていない時に、手で引っ張ってみれば簡単に実感することができます。
ドラグが同じ締め付け具合でも、スプール径が小さいほど引き出すためには、より大きな力が必要になります。
実際に釣りをしていても、リールのスプール径は一定ではないものです。
ラインが根掛かり等で減った時、魚を掛けて突っ走り続けられた時、スプール径は確実に小さくなります。
ですから、そのような時は、ラインが満タン状態でセットした時よりもドラグはきつめになっているのです。
これはどんなに高性能なリールでも生じる現象ですから、知っておいて意識しても無駄ではないでしょう。
もっとも、浅溝スプールと細いPEラインを巻いたスピニングリールを使う現在主流の釣りでは、スプール径の変化はごく僅かなものです。
ですから、ドラグ力の変化も僅かであり、気にするほどのレベルではないのかもしれません。
ドラグ力が激変するリール。
一方で、魚が掛かってからドラグ力が激変するリールがあります。
フライリールです。
フライフィッシングで使われるラインは極太であり、それが魚に引き出されれば、スプール径は大きく変わり、ドラグの力も大きく変わります。
キャストする前にラインを手で引き出していても、だんだんキツくなっていくのが分かるほどです。
小型のフライリールはドラグがクリック式で、ドラグ力を調整できない物が沢山あります。
ラインを手で手繰って魚を寄せてくるような小物の場合は置いておいて、それなりに良い魚が掛かれば、ギュイーンとラインが引き出されていきます。
ギュイーンと引き出されるほど、どんどん急激にドラグはキツくなっていくわけですから、他の釣りをする人は「ヤバイんでないの?」と心配になるかもしれません。
しかし、余程のことがない限り問題はなく、むしろこの変化は徐々にブレーキが効いていくようで、魚を落ち着かせる効果があるのではないかとさえ思えてきます。
ドラグなんてこんないい加減なものなのですから、ラインの強度ギリギリの限界に挑むような釣りをしない限り、ある程度セットした力で作動さえすればどうでもよいのではないでしょうか。
8万円もするようなリールを買う人々は、そんなに凄い釣りを日々しているのでしょうか。
そんなに細かいドラグの性能差にこだわる必要は、全くないのではないでしょうか。
たいして使いもしないことにこだわる釣り人が多いのを見ていると、そう思わずにはいられません。