フロントグリップがしっかりとした作りのルアーロッドが好きだ。
なぜなら、そこには夢が詰まっているから。
最近のルアーロッドの中には、フロントグリップが小さくて飾り程度のものや、付いていないデザインのものがある。
そういった物を見かける度に、「夢のない竿だなぁ」と僕は思う。
普通に釣りをする上では、フロントグリップの必要性を感じることは、ほとんどない。
だから、どんどん省略されていく傾向にあるのも、もっともなことだと思う。
しかし、フロントグリップが、どうしても必要になる時がある。
それは、水中に引きずり込まれそうになるほどの、大物がヒットした時だ。
大物に引き込まれ、片手では竿を立てていられない状態になった時、左手でフロントグリップを、右手でリアグリップを掴み、両腕と背筋の力を上手く使って対抗することになる。
そうしないことには、ちょっと耐えられないような力のある魚が、世界にはごろごろと居るのだ。
だから、今でもソルトウォーターの大物用のロッドには、しっかりとしたフロントグリップが付いている。ソルトウォーターの釣りでは、ギンバルを使用すれば両手でフロントグリップを握ることさえもあるからだ。
一方で、フロントグリップが省略されているようなロッドは、そういった大物を全く想定しておらず、「夢を捨てたロッド」と言ってもいい。
小さくまとまっちゃっても良いと、人生を諦めた日本の中年サラリーマンのような存在だ。
僕は、大物が釣れる可能性がゼロに近いような釣りでも、夢は捨てないでいたい。夢の無い、あまりに現実的な釣りなんて、していても面白くもなんともない。
だから、使う可能性がほとんど無いものになるとしても、フロントグリップはしっかりと付いていて欲しいと思う。
そういえば、もう解散してしまったが、UFMウエダというロッドメーカーがあった。
昔は、良い物を普通の値段で売る堅実なメーカーだったようだが、それでは利益が出せなくなったためか、いつの頃からか高級ロッドを売るメーカーに変わっていった。
それと同時にして、ロッドのフロントグリップが、先細りで小さく、ただの飾りのようなデザインに変わっていった。
あれが、夢を捨てたロッドの先駆けだったような気がしてならない。何かが操作しやすいとか軽量化だとか、理由があるのかもしれないが、とても情けなく見えてしかたない。
世間では、あのロッドが好きな人達も多いらしいが、僕はルックスの時点でもう使う気にもなれないのだ。
小さくまとまって、先細りになって、解散した、会社のその後の運命を暗示しているようなデザインだったと思う。