釣りにゃんだろう

猫のように気まぐれに 独断と偏見に満ちた釣り情報をお届け

1992年復刻版 カーディナル33の功罪。

日本で渓流釣りをする人々に大変人気のある、ABUカーディナル33というリールがあります。このリールは、日本で最初のルアー釣りブームが起きた頃の1976年に発売されたものです。
その頃は、欲しくても高価で買えなかったであろうルアー少年達が、日本には沢山居たのでしょう。

f:id:nyandaro:20190228141314j:plain

そこに目をつけたABUの代理店であったオリムピック社は、その少年達がしっかりと購買力をつけたであろう1992年に最初の復刻版を販売しました。(当時の定価23,000円)

絶妙な時期に発売されたこのリールは、そこそこ売れたのではないでしょうか。

釣り人達にインスプールリールを再注目させたり、オールドリールの利用を考えさせるなどの功績もあったのではないかと思われます。
しかし、一方でこの1992年の第一回目の復刻版は、かなり問題のある製品だったのです。

 

 

1992年復刻版カーディナル33の問題点。

f:id:nyandaro:20190228140954j:plain

この復刻版は、品質にかなり問題のあるものでした。

リールの品質にはバラつきがあると言われていますが、これらの問題はほぼ全ての個体で見られたそうなので、もはや不良品と言ってもよいレベルのものでした。


異常な後ろ巻き。

f:id:nyandaro:20190228141355j:plain

このような形には巻けません!

このリールにラインを巻くと、プリンや成層火山のような形に巻けたそうです。
これは後ろ巻きと呼ばれ、ライントラブルの原因となるものです。

 

 

ベールスプリングの巻き数が少ない。

f:id:nyandaro:20190228141024j:plain

インスプールのリールに使われているベールスプリングには寿命があり、いつかは必ず折れるものです。
しかし、オリジナルのカーディナルに使われているものは、そう簡単には折れないように設計されていました。

ところが、1992年の復刻版では、このスプリングの巻き数を減らしてしまっていました
こうなると、かなり耐久性が低くなり、ベールスプリングが早く折れることになってしまいます。

 

f:id:nyandaro:20190228141630j:plain

このリールを製造していたのは、当時他のABUのスピニングリールも手掛けていたミズホ製作所だと言われています。
同時期に作られた他のリールには、このような不具合はあまり見られていないのに、どうしてカーディナル33だけがヒドかったのかは、大きな謎となっています。


このリールの影響力。

昔からカーディナルを愛用していた人が、このような92年の復刻版カーディナル33を手にしたら、「やっぱり復刻版はダメだな」と思い、古いリールを大事に使うだけかもしれません。

しかし、これが初めてのカーディナルという人や、インスプールリールはこれが初めてという人が手にしたら、どう思ったでしょう。

「ライントラブルが頻発して、ベールスプリングがすぐ折れるのが、ABUのカーディナルだ」
「インスプールリールは、やはり旧式で不便な物だ」
そう判断されても不思議ではありません。

また、もしもこの時、このリールが当たり前の普通の品質のものだったら、どうだったでしょうか。

「インスプールリールは旧式とは言え、結構使いやすくて便利だし、見た目もオシャレで良いな」
と、見直す人が沢山いたかもしれません。
その結果、大ブームとは言えないものの、インスプールリールの日本での人気が高まり、愛用者が増え、今でも新作が作られるようなことになっていた可能性さえあります。

このように、1992年復刻のカーディナル33は、インスプールリール復権の大チャンスを見事に潰した「やらかしリール」と言えるのではないでしょうか。


このリールを選んだ人々の一部は変な方向に。

f:id:nyandaro:20190228142136j:plain

ヒドい品質だったにも関わらず、一部の人々はこのリールをチューニングして大切に使いました。
始めは個人で一生懸命工夫をしていたのでしょうが、そのうちチューニングを代行したり、工具やらカスタムパーツを販売する商売が生まれました。

ヒドい点だけ直せば素晴らしいリールであったのに、こういった業者は儲けるためなのか、わけのわからない改造をしたり、パーツを販売しだし、ユーザーの中にはそれに飛び付く人も現れました。

木のノブ(濡れたら滑るだろ)、木のカバー(そこを木にするか?)、タブルハンドル(意味あるのか?)、ローターに穴をあける(ゴミがシャフトに直撃だ)、音の小さくなるバネ(そこをいじっていいのか?)

こういったカスタムをされまくったリールは、ヤンキーの弄り倒した車のようになり、一部の人々からは「下品なカーディナル」などと言われています。
せっかくクラシックな美しい物が復刻されたのに、あまり弄りすぎると台無しな気がしますし、性能を求めるなら新しいリールを使った方が良いと思います。
「下品だ」と言う人の言い分が、とてもよく分かる気がします。

このようにカーディナルを不必要なまでに弄りすぎる文化を生んでしまったのも、買ったそのままでは快適に使用できないような92年復刻版が原因で、多くの人にリール弄りに目覚めさせてしまったからかもしれません。

 

 

f:id:nyandaro:20190228142333j:plain

このように盛大にやらかしてしまった1992年復刻版カーディナル33ですが、2001年にも復刻版が製造されています。
その後もカラーや仕様の違うカーディナルのこのサイズの物は、度々製造され販売されています。
そして、それらの物は徐々に92年の物にあった問題が解決されていったようです。
もしもカーディナルを使ってみたいと思っている方がいたら、そのあたりの情報をよく調べ、慎重に選ぶことをお薦めします。
品質に問題のないものなら、カーディナルは使いやすくて頑丈で、とても良いものなのですから。