開高健の文章に、無事に魚が釣れ上機嫌になり「明日は雨でもいい、晴れでもいい」と心境を語るものがあります。
この表現は、魚が釣れた釣り人の心が急速に広くなった状態を、見事に表していると思います。
魚が釣れない時の釣り人は、苛立ち卑屈になり、世界を恨み、とんでもなく心が狭い人間であることが少なくありません。
これが、魚が釣れた途端どうなるでしょうか。
悟りでもひらいたかのように、寛容になり、優しく心が広い人間に様変わりします。
もう明日はどんな天気になっても良いし、釣りができてもできなくても良いし、自分以外の誰かが魚を釣っても心から祝福できるし、世界中の人が穏やかに平和に暮らして欲しいとさえ思えてきます。
こんな状態の時に他の釣り人と出会うと、ついつい簡単に秘密のポイントや釣り方なんかも教えてしまうこともあります。
このように、魚が釣れた時の釣り人ほど心が広い人間はいませんから、 釣りをする人間に何かお願いする時は、この瞬間を狙うべきでしょうね。
家族に高い買い物をしてよいか聞く時なんかも、もし相手が釣りをする人で、この状態の時だったら、相談が上手くいく可能性は高くなるかもしれませんよ。