テレビでお散歩番組のようなものをやっていて、タレントが郊外の川で釣りをしている人を発見して、「何を釣っているんですか？」と尋ねていました。
釣り人は、いくつかの魚種を答えた後に、決まり悪そうな笑顔を浮かべながら、「たぶん何も釣れないけど…」と言っていました。
そんな様子を見ていると、「釣りってこういうことがよくあるよなぁ」と、しみじみと思ってしまいました。
釣りができる場所は、いつでも魚がウジャウジャ溢れかえっているわけではありません。
特に家の近所の川のような場所では、釣りをしたところで、ろくに魚が釣れないような状態である人も多いのではないでしょうか。
釣り人は、そういったそんなに多くは望めないことが分かっている場所でも、とりあえず釣りをしてみたくなってしまうもので、「何も釣れないんだろうな」と思いながら釣りをしていることがよくあります。
釣りをしない人達からしてみれば、「ほぼ魚が釣れない場所で釣りをするなんてアホなんじゃないか」と思うかもしれませんが、釣り人とはこういう生き物なのです。
たとえ魚が釣れないにしても、とにかく釣りをして、あれこれ試していれば、ある程度は心が落ち着くので、釣りに行かないよりは、ずっとマシなのです。
なんだか、もう何かの中毒症状みたいな感じですが、「とりあえず何かしら釣りをしていれば、死なずには済む」といった人が、釣り好きには多いはずです。
もちろん、いつまでも魚が釣れない釣りをしていたら、それはそれで精神状態が悪くなってしまうものですが、たとえ魚がいない場所でも、ちょっと近所で釣りをするだけで、ある程度は心の平穏は取り戻せるのです。
これは、何の趣味も持たず、仕事に追われ家族付き合いに疲れ、ストレスをひたすら溜め続けるような人生を送っている人達と比べれば、幾分か幸せなことではないでしょうか。
釣り人は、いつでもどこでも、それなりに心を癒すことができる手段を持っているのですから。
