私は、子供の頃は虫を捕るのが趣味で、特に一番熱中したのがオオクワガタを探すことでした。
幼虫から大きく簡単に育てる飼育方が確立され、オオクワガタ飼育の大ブームが起こった少し前のことでしたから、産地に通っていても、たまにしか同じクワガタ捕りの人は見かけないような時代でした。
そんなまだ爆発的に乱獲が進む前の時代でも、まあなかなかオオクワガタは見つからなかったものです。
近頃やっているイトウを釣ることと比べても、オオクワガタを捕まえるのは100倍以上難しかったという印象を持っています。
そんな状況でしたから、さぞ珍しい虫だったのだろうなと思って、環境省レッドブックなるものを調べてみると、オオクワガタは絶滅危惧Ⅱ類に分類されていました。
これと比べて、魚のイトウを見てみると、もう一段階絶滅の危険度が高い絶滅危惧ⅠB類に分類されています。
レッドブックの分類では、オオクワガタよりイトウの方がレアだということなのです。
しかも、オオクワガタが絶滅危惧Ⅱ類になったのは2007年で、私が探していた時代はさらに一段階絶滅の危険度が低い準絶滅危惧種だったようです。
こんなに違いがあるとは、両方を追いかけていた私の感覚からすると、ちょっと信じられませんね。
イトウは、川で釣りをしていると毎回は釣れなくとも、ちょっと見かけるようなことは、道北でも道東でもいくらでもありますが、産地の雑木林を何日もさ迷ってもオオクワガタを見かけることは、ほぼありませんでした。
それだけオオクワガタが用心深く隠れるのが上手な生き物だったという可能性がありますが、それにしたってイトウよりは珍しいのは間違いないのではないかと思ってしまいます。
それから、もう少しレッドブックの魚の分類を見てみますと、オショロコマが絶滅危惧Ⅱ類に分類されていて、オオクワガタと同じだということなのです。
一部では乱獲されたりして減っている場所もありますが、あの湧いてくるように釣れるオショロコマが、オオクワガタと同じ絶滅危惧Ⅱ類だとは、ちょっとびっくりしてしまいます。
おそらく、絶滅危惧種というのは、今どれだけ居るのかということだけではなく、今後生息環境が失われる可能性なども考慮されて決められているため、単純に珍しい・数が少ないということと危惧度の分類とは比例しないのではないでしょうか。
ですから、実際に自然の中で見かけた時の珍しさといった感覚とは、一致しないものとなっているのかもしれません。
どれだけ数が少ないものなのか、どれだけ本当に絶滅の危険があのるかということは、レッドブックなどの分類だけでは分からないものなのではないでしょうか。
レッドブックで絶滅危惧種と言われても、秒で釣れてしまうようなオショロコマもいれば、本当に珍しいオオクワガタのようなものもいるわけですから。
何れにしても、どんな生き物でも捕りすぎはよくないことでしょうから、このような分類だけを頼りにせずに、常に自制心を持って捕るなり釣るなりすることが、一番大事なのではないかと思います。