人気のあるトラウトの管理釣り場が、とても混雑することは釣りの世界の常識ですが、その混雑度がマックスに高まるのは世間が正月休みの時期のようです。
やはり、釣り人というものは新年早々に釣りをしないと気が済まないらしく、それもできれば確実に魚を釣って気持ち良く新年をスタートさせたいと思う人が多いのでしょうか。
しかし、そんな人が大量に集まって超絶的に混雑してしまったら、気持ち良く釣りができるわけがありませんから、正月に管理釣り場に行くなんて、ただストレスを溜めにいくだけのようなものなので、あまり利口な行動ではないと思います。
かく言う私も、実は一度だけ正月に管理釣り場に行ったことがあります。
ちょうど子供の頃していた釣りを大人になって再開した頃で、自分の中の釣り熱が高まりつつあり、新年早々魚が釣りたくてたまらなかったのです。
それでも、道路の凍っているような朝から出掛ける気はさすがにしないので、昼から半日料金で釣りをすることにしてのんびりと釣り場に向かいました。
釣り場に着いてみると、まずは車を停めるのに一苦労。
あり得ないほどの数の車が駐車場から文字通り溢れていて、本来なら駐車枠ではない激狭な場所に停めろと係員の人に案内されます。
私は運転が下手な部類なので、隣の車に当てやしないかビビりながら、なんとか駐車することができました。
難民キャンプで支援物資に人々が群がっている状態のように人でごった返す事務所で必死で料金を支払うと、ようやく釣り場に入ることができましたが、釣り場でもこれまた異常な密度で肩を触れ合わせるように釣り人達が並んでいます。
もう魚なんて釣れなくても良いから、とにかく少しでも人が少ない場所を探そうとうろうろして、ようやくちょっとだけ落ち着いた雰囲気の場所に入れてもらいました。
真っ直ぐ前にキャストすれば釣りにはなるのですが、やはりどうしてもたまにラインがクロスしたり、対岸の人とオマツリしたりしてしまいます。
それでも、私の落ち着いた雰囲気の人が多い場所の選定が正しかったのか、喧嘩などにはなることはなく、皆さんそんな時は静かに会釈してお互いに謝り合っています。
どうやら、わりと平和主義者の多いゾーンに入れたようで、なんとか釣りはできそうです。
しかし、そんな平和な状態を乱す輩も居るもので、でっかいミノーをロッドの先にぶら提げたお兄さんが、見えている大型魚を狙って、我々平和主義者の間に身体をぶつけるように接近して無言で入り混み、バシャバシャとキャストし始めました。
ちょっとでも気の短い人がいたら口や手を出していても不思議ではないほどマナーが悪い輩でしたが、やはりそこは平和主義者ゾーン、誰もが黙り不届き者が秩序を乱すのにじっと耐えています。
魚が釣れずに不届き者が去ると、皆さん「良かったですね」とばかりに無言で顔を見合わせ、たまたま居合わせた他人同士ながら、なんだか絆が生まれたような気さえしました。
そんなわけで、超絶混雑していた正月の管理釣り場でしたが、周りの釣り人達に恵まれたおかげで、なんとか無事に新年の釣り初めをすることができました。
しかし、あんな状態はもう二度と御免だと思うには充分な体験でしたから、私はもう一生正月に管理釣り場に行くことはないでしょう。
昨今はコロナ禍とは言え、気が緩みまくっている人が多い雰囲気ですし、そもそもコロナが流行ってから管理釣り場は余計に混んでいるそうですから、今年の正月も管理釣り場は相当混雑することでしょう。
もしも行こうか検討している人がいたら、私は酷い目にあうだけだから止めておきなさいと言いたいところです。
どうしても管理釣り場に行きたいのなら、悪いことは言わないから1月中旬まで釣りは我慢して、ちょっとは人が少なくなってからの方が良いのではないかと、私は思います。