私は、野人と聞くと某元サッカー選手を思い浮かべますが、野人という言葉があるくらいなので、昔は本当に山で暮らす野生の人間のような人達が居たらしいです。
何らかの理由で山に入ってしまい出てこなくなった人達が多かったようですが、衣服もろくに身につけず、身体一つで野性動物のように生きていた人が本当に居たというのです。
そういった人達が、冬は雪が積もるような東北地方にも居たそうですから、人間というものは、本当はかなり丈夫な生き物なのかもしれません。
それでは、現代でも頑張れば人間は野生化できるのかというと、最近でも家出したまま何十年も山で暮らしていたような人もいるにはいるようですが、基本的にはちょっと無理ではないかと私は思いますね。
それは、山の環境が野人が居た頃とは随分と違うと思うからです。
今の日本は、かなりの範囲の山林が人工的に植えられた針葉樹の森になっています。
それに対して、昔は広葉樹が多い自然の森しかなかったはずです。
広葉樹の森なら木の実などの食料が豊富に手に入りますし、それをエサとする小動物も多くて捕まえられるでしょうし、川にはカニや魚だって溢れていたはずです。
素手で拾ったり捕まえるだけでも、なんとか生きるだけの食料は手に入ったのではないでしょうか。
それが、現代の針葉樹の森ではどうでしょうか。
歩いていても、なかなか食べられそうなものは見つかりませんし、体一つでサバイバルするのには厳しい環境なのではないでしょうか。
野人が生きられないほど、現代の森は生態系が壊れてしまっていると考えて間違いなさそうです。
そう考えてみると、現代の渓流なんかに魚があまり居ないのは納得です。
山の生態系が失われているわけですし、魚のエサとなる昆虫が少ないはずですし、昔のように魚が増えるわけがないはずです。
よく、「昔は手掴みできるほど魚が居た」などと言われることがありますが、まだ山林が開発される前の時代は、きっと本当のことだったのでしょう。
現代の川に魚が少ないのは、堰堤などの工作物や産卵場所が少ないなどの河川環境にも原因があるのでしょうが、そういった環境を改善したくらいでは、昔のようには戻らないのでしょうね。
山そのものがダメになっているのですから、木を全部植え替えて100年くらい待たない限り、どうにもならないでしょう。
そんなことを現代の人間がやるはずがありませんから、もう二度と手掴みできるほど魚が居た川は戻ってこないのだと思います。
野人が居た頃の時代の川に、現代の釣り具を持って出掛けられたら、どれだけ魚が釣れたでしょうか。
そんなことは、今となっては実現不可能な夢や妄想でしかないのです。