新しい朝が来た。
希望の朝だが、誰一人として目を覚ます気配がない。
まだここが目的地ではないのだから、さっさと先に行こうぜ!という気がしないでもないのだけれども、我々には時間はいくらでもあるし、先を急ぐようなちんけな旅でもないのだ。
一番疲れているはずのドライバーさん達が、8時ごろに一番に目を覚まし、わずかな睡眠時間で颯爽と帰っていった。朝からあのスタック山を越えて、また10数時間ドライブするのだから、本当にタフな人々だ。
トイレを済ますために、小屋の裏の河原に立ってみる。
昨夜の雨が心配だったけれども、そんなに増水している様子ではなく、川も大き過ぎず、釣りにはちょうど良い塩梅だ。
まだ今日はここから20キロほど下るのだが、そんなに釣りには悪い条件ではないのではないかと、希望的観測をする。
柔らかな金色の朝日の照らす対岸では、馬がゆったりと草を食んでいる。
11時頃になって、ようやく釣り人達が目を覚まし始めた。
ここに宿泊する3人のフライフィッシャー達は、そそくさと支度をして、仲良く歩いて釣りに出かけていった。
まだ旅の途中の僕達6人は、宿泊地まで川下りをしながら釣りをする準備をのんびりとする。
大きな荷物は、ラクダに乗せて宿泊地まで運んでくれるという。
もう家を出て、かなりの時間がたっている気がするが、ようやくウェーダーを履く時間がやってきた。
それでも、まだ移動の途中なので、僕は「釣るぞ~!」という気にはなれず、今日は川下りがメインという気分だ。
モンゴルではお馴染みのソ連カーに乗せられ、すぐ近くのボートの準備されているポイントへ移動する。
そこは支流が合流する地点で、ゴムボートが土手の上に2艘無造作に置いてある。
支流とは言っても、かなりの水量で、朝見た本流と比べても、その規模はあまり差が無い気もする。
丸い石がゴロゴロとして、鮎釣りでもしそうな雰囲気だ。
すぐ横には、小綺麗なロッジの並ぶ、ピカピカのリゾートのような施設がある。
こんな所にこんな場所があるとは、なんとも驚きだ。
各ロッジの前には、ロッキングチェアが置いてあったりと、なんとも優雅な雰囲気。
なんとこれはフランス人がオーナーの、フィッシングロッジだという。
その証拠に、河原には何艘もアルミボートが係留されている。
しかも、その全てにヤマハ製の4ストロークエンジンを積んでいる。
一体どうやって、これだけの資材や装備を運んできたのだろう。
設備やボートなど、場違いとも思えるほどの豪華さに、明らかに富裕層向けの設備なのだろうなと、容易に想像できる。
それに比べて、庶民がメインの我々は、これから若干ぼろいゴムボートで、20キロほど川を下る旅に出るのだ。
ライフジャケットのジッパーも壊れかけていて、なかなか閉まらない。
価値観は人それぞれだろうが、少なくとも僕は、釣りをするのだったら、充実した装備で快適さを求めるよりも、ちょっと頼りないくらいの装備で、多少の危険と冒険を求めたいと思う。
ロッキングチェアとアルミボートよりは、たまに空気が抜けるゴムボートの方が、居心地が良いということだ。
さあ、いよいよ、3人ずつ別れて、ボートを土手から川へと引きずり下ろし、鮎釣り風の川へと漕ぎ出していく。
「雨で水が多くて危険だね、ハハハッ」
「そうだね。ハハハッ」
と笑い合いながら、合流地点に差しかかかると、もうちょっと笑っている余裕もなくなった。
二つの川が合わさると、かなりの水量と勢いで、ドッボンドッボンとボートに水が入ってくるほどの「ファイト一発オロナミンC」状態になり、時おり前方に現れる巨大な石を避けるのに注意を注がなくてはならなくなる。
今朝、おしっこをしながら眺めた、ゆったりとした流れは、どこへいってしまったのだろうか。あまりの激変ぶりである。
今日も、楽しく長くハプニングに満ちた一日になりそうだ。

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