『イスタンブールでなまず釣り。』という椎名誠の本があります。
私は、まだ釣りをしたことのなかった子供の時代に、この本を読んだのですが、結構面白がって読んでいた記憶がありますね。
野山で遊ぶことは好きでしたから、こういった椎名誠の一連の調子の良い文章の自然遊びが題材の本は大好物でしたし、色々な発見もあったものです。
まず、ヨーロッパオオナマズなんていう魚が居て、それがとんでもなく巨大になるということを、この本で初めて知りました。
それから、「魚を釣るために海外に行く」という発想があることも、この時初めて知りました。
当時は、釣りさえしたことがありませんでしたし、わざわざ魚を釣るために海外に行く人がいるなんて、思いもしなかったのです。
大袈裟でちょっとバカげていて面白そうだけれど、これは本でやるような、あくまで企画であって、自分はこんなことはしないだろうなと、当時の私は思っていたものです。
それが、その後釣りを始めてみたら、多少は釣りをしない時期はあったものの、いつの間にか自分も海外に釣りに行くまでになっていたのですから驚きです。
やはり、釣りが好きとか、魚が好きとか、何かが好きだという気持ちには、ちょっと普通の人達からは考えられないような行動に、人を走らせてしまうほどの力があるようです。
刺激の少ないこの時代に、それだけ打ち込めることに出会えたのですから、私は幸せだったのかもしれません。
「一生、幸せでいたかったら釣りをしなさい」なんて中国の古い諺があるとかないとかですが、私はそこまで釣りは手放しで楽しいものだとは思えないものの、こういった点から考えれば人生を豊かにしてくれる、なかなか良い趣味ではあるなと、納得はいくような気はしています。