釣りにゃんだろう

猫のように気まぐれに 独断と偏見に満ちた釣り情報をお届け

釣りでうめき声を上げること。

いつだったか寒い時期に湖で釣りをしていたら、突然「あーー!」という断末魔のようなうめき声が聞こえてきて、びっくりしてしまったことがあります。

声のする方に目を向けてみると、ちょっと離れた場所で、シニアとみられる釣り人が立ち込んでいた水中から岸にジャブジャブと上がっていくところでした。

ガイドについた水滴が凍るような寒い日でしたし、陸に上がろうとしたら、水中で冷えた身体が一瞬でさらに冷やされて、大きなうめき声をあげたくなるほど辛かったのでしょう。

 

突然の大声にちょっとびっくりしてしまったものの、その辛さはよく分かるので同情してしまいましたが、同時に我々釣り人はどうしてわざわざこんな苦行を行わないとならないのかと、改めて考えてしまいました。

そのうめき声をあげた人の年齢から考えてみれば、もう仕事は引退しているはずです。
今のシニアだったら年金だって結構な額をもらえているでしょうし、こんな寒い日には家でコタツに入ってテレビを見ていたって、誰にも文句は言われないはずです。

それなのに、わざわざ釣りに来て水の中に浸かっているなんて、余程家に居たくない何かがあるのでしょうか。
それとも、釣りをしていないと忘れられないような、苦い人生の経験でもあるのでしょうか。

 

それだけ釣りが好きなのだ、と言えばそれまでですが、それにしたって自ら苦しみ過ぎです。

やはり、きっとそれだけ釣りを好きにならざるを得ないような、深い理由があるのではないでしょうか。
そうでなかったら、寿命を縮めるような釣りの苦しみを味わいに、わざわざやってくるとは考えにくいです。

どうも年老いた釣り人というものには、哀しみがつきまとうものだと思ってしまいましたが、歳は違えど同じようなことをしている自分も変わらないじゃないかとも思いました。

 

わざわざこんなことをする必要もないのに冷たい水の中に立ち込み、朝から一匹も魚が釣れないまま、手を真っ赤にしてトイレを我慢しながら投げ続けているなんて、やっぱり自分にもどうしてもこうせざるを得ない理由があるのでしょう。

けれども、その理由が何なのかは、自分では未だによく分からないのです。
誰かの言葉ではないですが、釣りに行く本当の理由を本人は「知らないでいる」のでしょうか。

ため息をつくと肺の中まで凍るような、そんな1日のことでした。