釣りにゃんだろう

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オイカワのフライフィッシング。

人生で一番フライフィッシングで数を釣った魚は、間違いなくオイカワだと思う。

小学5年生か6年生の頃、きっかけは全く覚えていないのだけれど、フライフィッシングに興味を持って、親に入門セットを買ってもらった。

当時通っていた塾のすぐ側にあった上州屋で、今は亡きコータックの4番くらいのセットだったと思う。
(この上州屋も、先日久しぶりに近くを通ったら、見事に閉店していた。
当時のメーカーもお店も潰れているとは、釣り業界が終わりに向かっていることを、ひしひしと感じる。)

 

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さて、無事にフライフィッシングのタックルを入手できた私は、西山徹さんの本を読み、小学生ながら独学で始めてみることにした。

当時は小学生にしては、結構忙しかったので、日頃は本を読んで研究し、夏休みに伊豆の祖母の家に行った時などに、集中して練習に励んだ。

真夏の炎天下、祖母の家の裏の空き地で、ヒュンヒュンとロッドを降り続けると、なんとか狙った方向に、まっすぐにラインを伸ばせるようになった。

 

今思えば、変な竿と黄色いラインを振り回すその練習姿は、完全に不審者だったはずで、恥ずかしくてたまらないし、今ではあんなことは出来る気がしない。
こんな風に、子供は周りが見えていないということが、よくあるけれど、物怖じせずに何かにチャレンジする手助けになっているのではないだろうか。

 

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なんとか釣りになりそうなレベルになったので、川を利用したタイプの管理釣り場に、親に連れていってもらった。
ルアーとフライを交互に行う感じだったのだが、ルアーだとなかなか釣れないニジマスが、フライだといくらでもバシバシ釣れることに興奮した。
特に夕方に流したドライフライに、バシャっと魚が出て、ビシッと合せが決まった瞬間には、新たな釣りの快感を覚えた。

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これをきっかけに、ここからフライフィッシングにのめり込んでいくことに、なりそうなものだけれど、子供にはそうもいかないのだ。

まず、お金を持っていないので、このまま管理釣り場に通うのは難しい。
自然渓流にも憧れたが、子供が一人で行くには、交通手段もなく、危険なためハードルが高い。
こうなってくると、せっかく覚え始めたフライフィッシングは、完全に停滞することになる。

 

しょうがないので、身近に居てフライで釣れそうな魚を調べてみると、オイカワというものが居た。
身近とは言っても、これも家の回りには居なくて、祖母の家の近くの川でしか見かけたことがなかった。

だから、フライフィッシングというと、春夏秋休みに、祖母の家の近くの小川でオイカワを釣るというのが、ほとんど全てになってしまった。

その川は、大きな川に流れ込む、支流とも言えないような名も無き小川で、祖父のお墓のある墓地の裏を流れていた。

友達の父親が昔フライフィッシングをしていたとかで、大量のフライを戴いていたので、フライだけは沢山持っていた。
その中から、一番小さなミッジを選び、墓掃除の後に、墓石の横から川に流してみる。
一発でオイカワはフライに出て釣れてしまった。
いくらでも釣れるようで、何匹か釣っては逃がしを繰り返す。

 

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それからは、近くを通る度に、30分ほどで10~20匹ほど釣っては逃がすという、お気軽フライフィッシングを楽しむようになった。
魚を掛けるまでは面白いのだが、4番ロッドなので、合わせた瞬間に魚が飛んでくるようなもので、釣り応えはゼロなので、30分もやれば飽きてしまう。
鮎がいる川の支流なので、たまに鮎が釣れてしまうこともあった。

このように、私のフライロッドはオイカワ釣り専用になったまま、中学高校と進学するうちに、いつの間にか釣りそのものをしなくなってしまった。

それから、20年近くたって、またあの頃と同じように、毎日釣りのことばかりを考えているようになるなんて、なんとも人生は不思議なものだ。
私の人生は、一周回って小学生時代に戻ってきたように、毎日が好奇心と釣欲に溢れている。