たまに東京のど真ん中の電車内で、クーラーボックスと釣り竿を抱えて肩身を狭そうにして立っている釣り人を見かける。
田舎の方に行くと、電車内でもっと堂々と釣り竿を持っている人を、沢山見かけることができる。
海辺の町なら、全身魚臭いようなおっちゃんがヨロヨロと乗ってきたり、内陸部では、バスロッドをむき出しで持っている若者とか、よく見ると渓流竿のようなものをリュックサックに挿しているおっさんも居る。
こんな釣りキチ達を発見する度に、僕は「あんたも好きだねぇ」とニコニコと笑いながら見ている不審者になってしまう。
このような不審者になる機会が結構な頻度であるからして、電車で釣りに行く人というのは、それなりの数が居るに違いない。
釣りというと、基本的には車で行くものだろう。
車で行くと、荷物が沢山積めたり、移動が楽だったりと利点が多い。
しかし、電車で行く場合にも、いくつか良いことがある。
電車で釣りに行くと、まず酒が飲み放題だ。
堤防でビール片手にのんびりと釣り糸を垂らしても良いし、釣果に恵まれればお祝いに軽く一杯できるし、ボウズをくらったらすぐにヤケ酒を開始できる。
あまり飲みすぎると迷惑で達の悪い釣り人になってしまうけれど、お酒の好きな人にはたまらないだろうし、酒と釣りがセットで楽しみになっている人も居るのではないだろうか。
次に、電車釣行は移動が楽でもある。
車の方が楽だろう?と思われる方も多いかもしれないが、意外と電車移動は楽チンだ。
電車移動は、主に帰り道で威力を発揮する。
電車移動なら、どんなに疲れていても乗って寝ていれば自動的に帰ることができる。
だから、体力の限界まで頑張って釣りをしてしまっても問題ないし、魚が釣れなくてがっかりした気持ちで、さらに車を運転しなければならないという苦行を味わないで済む。
それに、早起きをしたり無理をしてスケジュールを空けたりして寝不足で疲労のたまった状態で運転をする釣りの帰り道というのは、釣りの中でも一番死に近い場面のような気がする。
釣り本番よりもこの運転の方が、ずっと危険なのではないだろうか。これを避けられるのだから、電車釣行は、釣りからの生還率が、ぐっと上がるに違いない。
最後に、電車などの公共交通機関を利用すれば、自家用車を利用するより、環境に優しいのは当然のことだろう。
電車内の魚臭いおっさん達は、実は立派なエコロジストなのかもしれない。(コマセを巻きまくって海洋汚染を行っているかもしれないが)
このように、電車で釣りに行くと、実は良いことがたくさん?ある。
一度も電車で釣りに行ったことのない人は、一度試してみると、意外とハマるかもしれない。
釣り竿などの不審物を持って電車に乗るのは恥ずかしいという、大きな問題があるが、実際には一般人は、あまり気にしていないものだ。
もしも、ジロジロ見てくる人が居たら、それは僕のような同じ釣り人だろう。
同じ不審者同士、仲良くしようではないか。