何にも縛られることなく、朝日を浴びる生活。
あてもなく車で旅をして気になる場所があったら釣りをして、日が暮れて疲れたら、どこでも好きな場所に車を停めて車の中で眠ればいい。
車が無ければ、テントと寝袋を持って、自転車でも徒歩でもヒッチハイクででも好きな所に行ける。
身体が汚れて気持ち悪くなれば、至る所に温泉はあるし、お腹が空いたら魚を釣って食べても良いし、どこの町にもだいたいセイコーマートがあるので、食べ物にも困らない。
資金が底をついたら、ちょっとした仕事を探せば、また旅をするお金ぐらいは手に入る。
いつだって絵画のような景色の中で、自由と孤独を好きなだけ味わうことができる。
こんな自由な暮らしが出来るのが、北海道の魅力でもあり、春から秋にはこの暮らしの魅力にとりつかれて彷徨っている人々を、老若男女いくらでも見かける。
そこら辺にいくらでも居るので、他の土地で同じことをしていると不審者と見なされるような存在でも、北海道ではあまり気にされることなく、野放しにしておいてもらえる。
世捨人、隠居人、人生を諦めた人、何かを探してる人など、世の中から少し外にはみ出しかけた人々には、楽園のようでもあるし底無し沼のようでもある。
こんな自由な北海道の雰囲気が、確かに日本ではあるけれど少し外国のような香りを醸し出しているのではないだろうか。
釣りの面においても、北海道は少しだけ外国ような雰囲気を持っている。
本州のようにチマチマとした道具は使われないことが多いし、本州なら大物とされる魚が、北海道ではエサのようなものだったりする。
そして、何よりも魚の生息している量がケタ違いだ。今までの釣りは何だったのかと、同じ国なのかと愕然とすることさえある。
それでいて、外国に行くようにパスポートも要らず、ガイドも要らず、自分一人で好きなように、好きな魚を釣ることができる。
日本のようで日本でないような、しかし外国でもなく、北海道は北海道であり、北海道の釣りは北海道にしかない。
道外から来て一度この釣りを味わってしまうと、もう戻ることは難しくなる。
色々な物を捨ててしまい、自由に徘徊する人々の仲間入りはしないまでも、季節ごとに釣りに来るほどの、軽い中毒症状を起こすことはよくあることだ。
まだ、この中毒性を味わったことのない人には、是非とも一度北海道に釣りに行くことをおすすめしたい。
できれば、1週間くらいは休みをとって、ブラブラしてみて欲しい。そのくらいの期間ではどうにもならないくらい、釣り場や釣りものは沢山あるのだし。
そして次の年には、1週間どころでは満足できなくなり、仕事をやめたり転職先を探すことになっていることが、ないとも限らない。
それくらいに、釣り好きにとっては北海道は危険な土地だ。