釣り人の様子を眺めている通行人や観光客のことを、釣りの世界ではギャラリーと呼んでいます。
なんだかゴルフみたいな言い方ですが、見知らぬ人から自分の釣りを観察されることは、あまり良い気分がしない釣り人が大半なのではないでしょうか。
ヘミングウェイも、『観客つきの釣りというものは、喩えていえば、肩越しに他人に覗かれながら恋文を書いているようなもの』なんて文章を残しているくらいですから。
私は、そもそも人間が嫌いだから一人で釣りに行くのが趣味なようなところがあるので、通行人が居るような場所にはあまり釣りに行かないようにしています。
それでも、たまには人気の多い場所でも釣りをすることはあるもので、そうなると観光客やらハイカーなんかの視線を感じることもあります。
特にフライフィッシングなんてしていると、かなり注目を浴びてしまうことが多いですね。
やはり、ちょっと釣りの中でも珍しいものなので、見たことのない人も多く、「あれは何をやってるんだろう?」
と、気になって仕方がない人が多いのではないでしょうか。
こうなってくると、やっぱりあまり恥ずかしい姿は見せたくないですし、カッコ良く釣ってやろうと、釣りに力が入りがちになってしまいます。
特に見ているのが子供達だったりすると、余計に私は力が入ってしまいます。
もしも、私が魚が釣れる瞬間を見せられれば、釣りに興味を持って始めようと思う子供がいないとも限らないと思うからです。
例えば、奥日光の湯川という川は、有名な湿地である戦場ヶ原の中を流れていて、小学生の修学旅行の野外学習の集団で、川沿いの遊歩道が溢れかえっていることが多いです。
ここで釣りをすると、常に小学生に見られているような状況になってしまうこともありますから、なかなか気が抜けません。
それなのに、せっかく魚を掛けた時に限って誰も見ていなかったり、緊張でもしたのか木の枝にフライを引っ掛けて、かなりカッコ悪いことになったりと、散々な目にあったりします。
やはり、ギャラリーがいるとカッコつけたくなってしまいますが、きっと実際にはそんなに真剣に見ている人はいないのでしょうし、あまり意識する必要はなく、普通に釣りをすれば良いのかもしれません。
それでも、時々釣れると拍手してくれるなんて人も居ますからね、どうしてもカッコつけたくなってしまいますが、そろそろこういった自意識過剰な釣りは止めにしたいところです。