たまに渓流で釣りをしている人が、沢屋と呼ばれる沢登りやキャニオニングの集団に出会い、ポイントをジャブジャブ歩かれて潰されたなどと怒っていることがあります。
渓流魚という神経質な魚を、これから釣ろうとしている場所を歩かれたり、時には飛び込まれたり泳がれたりするわけですから、怒りたくなるのは無理もないことかもしれません。
しかし私は、こういったことに絶対に腹を立ててはいけないと思います。
川は釣り人だけのものではない。
まず第一に、川は釣り人のものではないでしょう。
誰のものでもなく、立ち入りが許されている場所なら、常識の範囲内ならそこで何をしようが自由なわけで、釣り人の行動が優先されている場所ではないわけです。
川で釣り人が釣りをするのと同じだけ、沢登りの人が水中を歩き回る権利はあるわけです。
ですから、沢登りの人々が多少釣りの邪魔になったとしても、それを批判する権利は釣り人にはないはずです。
それから、「何をするのは自由とは言っても、他人に迷惑をかける行為は行ってはいけないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、世の中の大半の人は、「どうしたら魚が釣れなくなるか」「どういった行動が釣り人には迷惑なのか」といったことは知りません。
釣り人の中では常識的に考えれば分かることでも、それはあくまで釣り人達の中だけの小さな世界の常識でしかなく、その常識は外の世界では通用しませんし、それを他人に押し付けることはできないでしょう。
ですから、大半の沢登りの人達も自分達の行動が、釣りのポイントを潰しているとは気づいていないわけで、悪気がない人を釣り人側の都合で怒るなんて自分勝手なことは許されないはずです。
それに、いくら人が歩いたり泳いだりしても、釣れる魚は釣れるものですし、ちょっと時間をあければ魚も警戒心を解き元のポジションに戻ってくることが多いです。
他人と出会って、いちいち腹を立てるよりも、ちょっと座って空でも眺めて、ラインの結束部を結び直したりでもしていた方が、ずっと落ち着いて釣りができ、釣果も伸びるのではないでしょうか。