私は、魚釣りというと、でっかい魚に憧れる傾向があります。
1メートル以上のイトウが釣れた時なんかは特別嬉しいですし、もっと大きな魚を釣るために外国に行ったりもします。
大きな魚が釣れない釣りには興味がない時代もあったほどで、「1メートルにならない種類の魚は釣らなくていい」と言っていた時期もありました。
しかし、近年はさほど大きくならないような魚も釣るようになっているのですが、こうなったのは一匹のオショロコマとの出会いが原因なのかもしれません。
「ちょっとオショロコマの写真が必要だから釣ってみるか」と、あまりやる気もなく訪れた小さな川でのことでした。
3匹目の魚をキャッチした時に、私は言葉を失い、息が止まるような感覚を覚えました。
その魚はまさに宝石のように美しく、心の底まで照らされるような輝きを放っていたからです。
私はこの時ほど、魚を逃がすのが惜しいと思ったことはありません。
手離したくないほど、その美しさに魅了されてしまったのです。
いくらか写真を撮り、溜め息をつきながら魚を流れに戻した頃には、「魚はサイズが全てではないのだなぁ」と今までの考えを改めていました。
「こんなに小さな魚でも、これだけ心を揺り動かしてくれることがあるのだから、魚の大きさばかり気にするのはやめにしよう」と、その時誓ったのです。
まあ、そうは言っても、未だに魚の大きさにはちょっとこだわってしまうことはありますけどね。自分の釣りに対する認識が大きく変わったことは確かだったと思います。
あの宝石が釣れた川は小さく、釣りまくって良いような環境ではありませんでしたから、私は滅多に釣りに行かないようにして、今ではそっと大事に温存しています。