以前、奥日光の湯川で釣りをしていたら、一際大きな魚が、柳の枝が覆い被さり投げにくい場所で、悠然とライズしていました。
やはり、スレた大きな魚というものは賢くて、ちゃんと人間が投げにくい場所に定位するものなのですね。
「これまためんどくさい所で…」と思いながらも、立ち位置を工夫して、しゃがみこんでサイドキャストして、なんとか魚の鼻先にフライを落とすと、案外素直にパクリと咥えてくれました。

3番ロッドには、ちょっと不釣り合いな魚の重みを感じながら、「やった!大物だ!」と思いましたが、一瞬でその喜びは消えてしまいました。
水中で暴れる魚体に、鮮やかな赤い帯があったからです。
たまにニジマスが釣れることがあるという話を思いだしながら、とりあえず魚をランディングすることにしました。
それなりに魚に振り回されながらもネットに入れた魚は、40センチ以上あるものの、やはりニジマスで、ヒレも回復しておらず、放流色が濃く残るものでした。

私は、あまり詳しくないのですが、おそらく湯川では現在魚は放流は行われていないはずです。
ですから、このようなニジマスは、上流にある湯ノ湖から落ちてきたものになるはずです。
とは言っても、湯ノ湖と湯川を結ぶのは、湯滝という大きな滝のわけで、そこから落ちても生きているとは、魚というものは随分とたくましいものですね。
さらに、私がニジマスを釣ったのは小滝よりも下流でしたから、もう一つ滝を落ちてきたということにもなります。
放流された時か釣られた時に、弱っていたとか気を失っていたとかで、どんどんと湯ノ湖から流されて、滝から落ちてきたのでしょうか。
そして、かなり川を下った辺りで意識を取り戻し、野生に目覚め虫を食べて生活しているということになるのかもしれません。

なかなか大変な思いをしてきたニジマスを釣ってしまい、申し訳ない気持ちにもなってきてしまいます。
ただ、一つこのニジマスが幸せだったのは、魚を持ち帰れる湯ノ湖から、完全キャッチ&リリースの湯川に来たということでしょうか。
少なくとも、人間に釣られて食べられてしまうことはないわけで、ほんの少しだけ安心して余生を送れるかもしれません。

まあ、それでも毎日のように頭上をピュンピュンとラインが飛び交うのは、たまったものではないでしょうけどね。
決して綺麗ではない放流もののニジマスながら、妙に印象に残る一匹でした。