北海道の東部である道東地方には、ドリフトボートを使って釣りのガイドをしている業者があります。
道東の河川は湿原の中を流れていることが多く、植物が繁っているために、徒歩で釣りをするのは大変な労力が要るものです。
また、場所によっては徒歩では到達できない地点もあります。
そのような場所でボートで川を下りながら釣りをするのは、とても有効なはずですし、ちょっと楽しそうだなぁと私は思います。
しかし、それと同時に私は、「こういうものは、地元の釣り人達からは反感を買うんだろうな」とも思いました。
日頃、自分達が苦労して藪漕ぎをして釣りをしている川に、ボートでやってきて釣りをして、それで金儲けをしているとなれば、面白くないと思う釣り人は、沢山居るのではないでしょうか。
川は、誰のものでもないのですから、そこで誰が何をしようが自由なわけですが、どうしたって地元の釣り人達は良い気分はしないはずです。
特に、地方の釣り人達は、「縄張り意識」のようなものを強く持っていることが少なくないわけで、そこにボートできて商売をされたら、けっこうな反感を買うはずです。
評判は?
私は、道東ではあまり釣りをしないのですが、先日その方面の釣りに詳しい人と話す機会があったので、「やっぱり、あれはあまり地元では評判が良くないの?」と、ドリフトボートガイドについて聞いてみました。
予想通り「あまり評判が良くない」とのことですが、その理由はちょっと予想外のことでした。
もちろん自分達の地元でボートで釣りをして金儲けをしているのに腹を立てている人も居るが、それ以上に魚の釣り方や釣った魚の取り扱いが批判されていると言うのです。
その業者から公表されている動画や写真を見てみると、今時トレブルフックを付けたルアーを使って、魚をぐちゃぐちゃに掛けていて、さらに釣れた魚を、フィッシュグリップを付けて吊り上げて水から出して撮影しているのだそうです。
そのようなマナーの悪さも、評判の悪さの原因の一つだと言うのです。
それを聞いて、私は「なるほどなぁ」と深く納得してしまいました。
魚のお陰でしょ 。
釣りで商売をしている業者が、一般的に良くないとされるような釣り方と魚の扱いをして、それを公表してしまったら、反感を買わないはずはないでしょう。
実際には、地元の釣り人達の中にはもっと酷い魚の扱いをしている人達はいるはずです。
しかし、釣りで商売をしているのなら、地元の一般の釣り人達とは、全く立場が違うのではないでしょうか。
広く世間から見られる立場なのですから、率先して川や魚を守るような行動をしていくべきなのではないでしょうか。
商売ができているのは、川や魚のお陰なわけですから、それを少しでも守るための行動をとらないなんて、少し配慮が足りないでしょう。
利用者にはシングルフックの使用を義務づけるとか、魚を水に入れて撮影するとか、最低限のレベルの魚への気遣いはするべきなのではないでしょうか。
そういった行動をとらないと、評判はどんどん悪くなっていくでしょうし、魚も傷つき減るかもしれませんし、自分で自分の首を締めるようなことになりかねないでしょう。
釣り関係者の魚の扱い方。
こういったことは、この業者にだけ言えることではないのかもしれません。
全ての釣り関係で商売をしている人達にも、当てはまることななのではないでしょうか。
近頃は、トラウト系の釣り雑誌などでは魚を水から出していない写真が使われることが、当たり前になってきました。
以前は、魚を水から出して持ち上げて、カメラに向けて突き出すような写真が多かったものですが、最近はあまり見られません。
これは、釣り人達の魚の扱いに対する意識が変わってきて、そのような写真を使えば批判を浴びるようになったからでしょう。
YouTubeなどで海外の釣り動画などを見ていると、ちょっと魚を陸に上げたりしているだけで、非難するコメントが溢れているのを、沢山見かけます。
世界的にもそういう時代になってきているのですから、この変化は当然のことだと言えるかもしれません。
そして、この変化は間違いなく良い変化でしょう。
釣り関係者が、公の場で魚を大切に扱えば、批判を浴びることはありませんし、そういった扱い方を広く啓蒙する効果もあるでしょう。
その結果、魚が守られることになるはずです。
釣りは魚が居なければできませんし、魚が守られることは釣りで商売をする人にも必ずプラスになるでしょう。
しかし、残念ながらこのような簡単なことも分からず、未だにトレブルフックを使ったり、魚の扱いが悪い、旧世紀の釣りをするような釣り関係者は、少なからず居るようです。
そういった人達は、そろそろそれが自分で自分の首を締める行為なのだと、知るべきなのではないでしょうか。