このご時世ですと、電車に乗る機会が減ったという人も多いのではないでしょうか。
私も去年は4回しか電車に乗ることがありませんでした。
本当は一度も電車に乗りたくないところでしたが、たまにはどうしても乗って行かなくてはいけない場所もあったのです。
そんな数少ない昨年電車に乗った機会に、なんとも不思議な光景を目にしたので、よく覚えていることがあります。
その電車は都市部から田舎に向かう海沿いを走っていて、いくらでも座れるほど空いていました。
時折車窓からは小さな港や磯が見え、のんびりと電車は走っていく中、ふと向かいの座席に座っている大学生くらいの女の子に視線を向けると、トートバッグから妙な物が突き出ていることに気がつきました。
釣り竿なのです。
振出し式のロッドにリールが装着されたものが、バッグに突き刺さっているのです。
これで女の子が防水ジャケットのようなものを着ていれば、「ははぁ、釣りに行くのだな。羨ましい」と思えるのですが、その子はちょっとモコモコしたコートを着ていて、とても釣りに行きそうな雰囲気ではなく、「街に買い物に行ってきた」といった感じです。
カジュアルな格好でも余裕で海釣りをしてしまう、ガチな釣りガールなのか。
それとも街で友達と会って、釣り竿を貰うか借りるかしてきた帰りなのか。
ロッドとリール以外には特に釣り具を持っていなさそうですから、恐らく後者なのではないかと考えられますが、ルアーだったら小さなケースを一つでも持っていればできるので判断がつきません。
私が誰にでも気軽に話しかけてしまうようなおっさんだったら、確実に「釣りかい?何を釣るんだい?」と話しかけていたでしょうが、とてもそんなことができる性格ではありませんから、この子は何者なんだ?と、ひたすら悩むことしかできませんでした。
そうこうするうちに、女の子は小さな海のある町の駅で降りていってしまいました。
あのまま釣りに行ったのか、それとも自宅に帰ったのか、今となっては永遠の謎となってしまいました。
私は身近に釣りをする人がいないので、釣りという物はかなりマイナーな趣味のような気がしていますが、こうやって意外な所でも釣り具を持った若者を見かけたりすると、「案外釣りをする人というものは多いのかもしれないな」と思い直してしまいます。