YouTubeにかなり昔から、日本3大怪魚釣りを制覇した人が写真をスライドショーにした動画がありました。(最近見かけないので消えてしまったのかもしれません…)
どの魚も立派なものですし、何度も旅をして制覇するまでかなりの苦労があったのではないかと思わされるものでした。
この動画の音楽には、ザ・バンドの『the weight』という曲のカバーバージョンが使われていました。
動画を再生し、この曲が流れるのを聞いた瞬間に、「ああ、自分と似たような気持ちの人がいるのかもしれない」と、私は勝手に共感してしまいました。
この曲は、抽象的な表現も多いですが、歌詞の主旨を大まかに言えば、悲惨な旅を続ける人が、重荷を捨てて楽になろうと呼び掛けられているような内容です。
私は、この曲は「早く楽になりたい」というような心情を歌っていると思っているのですが、なんだか釣りをしている時にはぴったりなのです。
たかが魚を一匹釣るために、家を遠く離れた場所まで行き、一日中寒風に曝され、目標の魚は釣れず、粗末な小屋や狭いテントや車の中で眠る。
こうなってくるといつも眠りにつく前には「なんだって、こんなバカな旅に出てしまったんだろうか」と後悔し始めて、「早く釣って楽になりたい」という気持ちで、この曲を聞くのが、私の釣りの定番となっています。
ひょっとしたら、この動画の作者の方も、釣りの最中に何度もやりきれない気持ちになりながら、この曲を思い浮かべていたのではないかと、私は勝手に思っているわけですが、何にしてもこの「こんなことをするんじゃなかった。早く釣り楽な気持ちになりたい」という気持ちは、釣り人なら誰でも理解できることなのではないでしょうか。
そんな気持ちに何度も押し潰されそうになりながら、なんとか苦労を重ね釣りを続けていくわけですが、ひと度魚が釣れてしまうと、安堵感と幸福感で、さっきまでの後悔をすっかり忘れて、「やっぱり来てよかった」なんて思い始めてしまうのですから、釣りをやめることはできず、また地獄の旅に出ることになってしまうのでしょう。
なんとも学習能力がないというか、釣り人というものはどこまでも哀れな生き物なのですね。
悲惨な目に遭うのは分かりきっているのですから、私はもう釣りは止めたいと思っているのですが、どうしても後悔より成功した時の幸福感の方が勝ってしまうようで、止められないままでいます。
あと何回、なかなか寝つけずに強風の音まじりにthe weightを聞けば、目が覚めるのでしょうか。