今年、ジワジワと流行った曲として、STU48の『花は誰のもの?』というものがあります。
リリースされたのは4月だそうですが、そこから何ヵ月も経ってから、テレビの歌番組で何度も歌唱されていたようなので、まさにロングヒットと言っても良いのではないでしょうか。
私も、夏頃に田舎のスーパーのような場所でかかっているのを聞いたことがあるくらいで、チャートや売り上げの数字以上に、この曲が世の中に浸透していった空気を感じました。
昨今の世界情勢を意識したメッセージ性の強い歌詞を、平和を訴える力の強い広島がある瀬戸内地方のアイドルが歌ったことで、より多くの人に響いた結果でしょう。
個人的には、この手のグループの作詞を手掛ける秋元氏の作文みたいな詞は、「表現としてどうなのよ?」といつも思ってしまうのですが、考えてみれば世の中の大半の人は、そんな作文みたいなストレートな言葉でないと理解不能なのかもしれませんから、より多くの人にメッセージを伝えるという点では、これが正解なのかもしれません。
それにしても、この曲で歌われている「国境なんて誰かが勝手に線を引いただけなんじゃないか」ということには、近頃私は深く共感してしまいます。
今年、外国の川に釣りに行ったら、「ここは!」というような絶好のポイントがありました。
しかし、どう考えても対岸からアプローチした方が良い地形をしていました。
かなり流れが強そうで、私は「渡るのはめんどくさいなぁ」と思ったのですが、一緒にいた人が「行こう!魚が君を待っている!」と言うので、頑張って渡ることにしました。
なんとか対岸にたどり着き、川岸のぬかるんだ土の上を2、3歩、ちょこちょこっと歩くと、今度はその人が、「足跡を残してはダメだ。ここは○○○(隣の国)だ。草の上を歩こう。」と言うではないですか。
初めはジョークかと思いましたが、ふと思い返してみると地図上では国境が川と重なっている地点があったので、「今居るのがちょうどその辺なのか!」と納得できました。
幸い、人間なんて誰も居ない様子ですが、国境というやつはかなり遠くからでも見張っていたりしそうなものですし、油断なりません。
それに、日本とその国の近頃の関係を考えれば、ここで捕らえられたら、そう簡単には帰してもらえないのは確実でしょうから、ちょっと困ったものです。
それでも、「せっかく外国まで釣りに来たのだから、これくらいの危険を冒すのも良い経験だろう」と思って、そのまましばらく釣りをしてしまったわけですが、本当に良い経験となりました。
実際に自分の身体一つで歩いて無断で国境を越えて、自然の中で釣りをしてみると、「国境なんて人間が勝手に引いた、ただのラインなのだ」と心の底から実感できたのです。
国境なんてものがあっても、鳥も虫も風も空気も、人間以外は自由に往き来していましたし、人間だってイカれた釣り人なら、こうして自由に往き来できるわけです。
やはり国境なんて、何の隔たりもない大地の上に、誰かが自分達の利権を守るために勝手に引いたラインでしかないのでしょう。
そんなものに固執して、争うことを止めない人間というものは、いかに愚かであるか、私はこの経験をしたことによって、より深く実感することができました。
↑曲名は、このあたりのオマージュなんでしょうね。
そんなわけで、この『花は誰のもの?』という曲を聞くと、私はあの河原に咲き誇っていた花を思いだしながら、共感してしまう今日この頃なのでした。
ちなみに、この曲の作曲が元チェッカーズの人だと知って、私はびっくりしてしまったのですが、若い人達は「何のことやら?」という感じでしょうか。
そんな若者達も、チェッカーズを知る世代も、この曲を同じように聞いているのですから、やはり音楽の力というものは、なかなか凄いものなのですね。