「引っ掛け釣りは違法です」
北海道のとある港に、このような看板がありました。
この看板に書いてある通り、魚に釣り針に食いつかせるのではなく、意図的に魚の身体に釣り針を引っ掛ける行為は禁止されていることです。
その看板の前では。
さて、この看板のある周りでは、数人の釣り人達が釣りをしていました。
時は9月であり、この場所は港に流れ込む小さな川の河口になっていました。
こうなってくると、当然釣り人達が狙っているのはサケであります。
北海道では、こんな何でもないような場所にも、秋にはサケが当たり前のようにやってくるのです。
サケは、河口規制というものがある川の河口では釣ってはいけないものですが、この場所には規制はないようです。
釣りをしている人達は、みなさんルアー釣りをしています。
浮きルアーなどではなく、ルアー単体で釣りをしています。
ということは、ルアーはスプーンかな?と思われる方が多いかもしれませんが、一人もスプーンを投げている人はいませんでした。
全員が使っているルアーは、メタルジグでした。
それをシュッ投げると、素早くリールのハンドルを巻きながら、時折ジャークさせています。
どう考えてもサケが普通に釣れるような方法ではありませんが、みなさんそんな釣り方を繰り返しています。
そして、一人の釣り人のロッドが大きく曲がりました。
メタルジグは、当然サケの口にはついてはおらず、背中にフックが刺さっています。
釣り人は、強引にサケを寄せてタモ網ですくうと、嬉しそうにサケを持って、近くに停めてあるキャンピングカーの方に歩いていきました。
どうやら、近頃夏の北海道中で見られるキャンピングカーで暮らす中高年の人らしいです。
サケ釣りの釣り人のモラル。
みなさんお分かりのように、「引っ掛け釣りは違法です」という看板の前で行われていたのは、完全に引っ掛け釣りです。
しかし、これは完全犯罪とでも言うような悪質なものです。
いわゆるギャング針というような、引っ掛け釣り専用の仕掛けを使っていれば、明らかに違法であり、取り締まりを受けることになるでしょう。
しかし、メタルジグを使った釣りは、見た目は完全に普通のルアー釣りです。
メタルジグをジャークしながらリトリーブするという行為も、メタルジグを使った釣りとしては、普通のことです。
ですから、明らかに引っ掛け釣り狙いで釣りをしているにも関わらず、表向きには何一つおかしな点はないのです。
普通はそんな場所では、あまりメタルジグを使う人がいないという点は、おかしいかもしれませんが、どこでどんなルアーを使うかは、釣り人の自由であり、それを理由に取り締まることはできないでしょう。
このメタルジグを使ったサケの引っ掛け釣りは、昨今は北海道ではかなり頻繁に見かける釣りです。
北海道の海には、場所取りをしたり喧嘩をしたり密集したりして、エサや浮きルアーでサケ釣りをしている人々が沢山いて、サケ釣りをしない人からしたら、信じられないほど野蛮な集団に見えるかもしれません。
しかし、そういった人達は、実はかなり真面目で善良な釣り人であり、悪い人達の間ではメタルジグなどを使うのがトレンドなのです。
私は、いつも思うのですが、こういったモラルのないサケ釣りをする人々は、他の釣りもする人達なのでしょうか?
釣りが好きな人なら、引っ掛け釣りなんてことは、しようとは思わないのではないでしょうか?
ただサケが欲しいだけで、サケ釣りの季節だけ釣りをする人々なのではないでしょうか。
それとも、サケ釣りのシーズン以外は、他の釣りも行う人々なのでしょうか。
だとすれば、それはそれでとても恐ろしいことだと思います。
こんな状態が続いているのですから、いっそのこと海でもサケ釣りを禁止にしたって良いのではないでしょうか。
せめて、サケを買った方がずっと安いくらいの値段のライセンス制にしては、どうでしょうか。
そうすれば、サケやイクラが欲しいだけの人々は、釣りはせず買いにいくようになるはずです。
まあ、そうは言っても、そういったことを望む人よりも、サケをタダで引っ掛け釣りしたい人々の方が、ずっと人口は多いはずでしょうから、実現することは未来永劫ないでしょう。
サケを引っ掛け釣りしたり密漁したりすることは、もう完全に北海道の文化となっていると言っても良いのではないでしょうか。