サクラマスというと、本州ではかなり希少な魚で、川で釣るのは大変難しい魚となっています。
しかし、これが明治時代くらいだったら、決してそんなことはなかったはずです。
日本中の大きめの川で、当たり前に見られる魚だったでしょうし、海がない内陸の県でも獲れていたものでしょう。
それだけありふれた魚であったはずのサクラマスが、大きく数を減らした主な原因は、河川の開発でしょう。

ダムや堰堤などの、海から川の上流の産卵場までの魚の遡上を妨げる建築物が無数に作られたり、川が護岸で固められて産卵に適した場所が無くなったりと、サクラマスが居なくなるような工事が、山ほど行われてきました。
サクラマスという魚は、稚魚を放流したりしても、わずかな数しか育って川には帰ってきませんし、自然産卵が行われる場がなくなれば、居なくなるのは当然のことだったでしょう。

このように、サクラマスという魚が居るか居ないかは、川が海から上流まで繋がっているか、川の環境が保たれているかによって決まるわけで、これはその川が自然の川かどうかを判断する、一つの指標になるのではないでしょうか。
自然の川というものは、海から上流まで自由に魚が往来できるものですし、魚が産卵できる環境があるものでしょう。
ですから、サクラマスが遡上してこなかったり、自然産卵できない川は、もう自然の川とは呼べないと思います。
これは、川としての最低限の基準だと思います。

サクラマスが居ない川は、自然豊かだなんて言えないでしょうし、もはや水路みたいなものでしょう。
そう考えてみると、現在多くの釣り人が釣りをしている川は、本当の意味では川なんかじゃないのですね。
川ではなくなった場所で、かろうじて生き延びている魚を釣っているというのが、日本の川釣りの実情だと思います。