ある夏の早朝、私が北海道の大きな川で釣りをしていると、上流からプカプカとパックラフトらしき小さなカヤックが流れてきました。
河原で何泊かできそうな程度の荷物を積み、60代くらいの男性が一人で乗っていて、あまりパドルを漕ぐこともなく、静かに川の流れのままに下ってきます。
私のウェーディングしている前までくると、男性は「おはようございます~、ごめんなさいね~」と言いながら手を振りました。
私も、カヤックが通ったくらいで魚が釣れなくなることは知っていますから、「いえいえ~」と釣りをする手を止めて返事をしました。

男性は、通過しながら「ニジマス?釣れる?」と聞いてきたので、それなりに釣りの知識もあるようです。
私が、「さっきからウグイばっかりです」というと、「暑いものね~、さようなら~」と言いながら下流に去っていきました。
私は釣りを再開しながら、遠ざかっていく男性を観察していると、ゆっくりゆっくりと川を下っていきながら、コンパクトデジタルカメラで風景を写真に納めたりしていて、ニコニコとしているように見えました。
その姿を見ていると、私は「おじさん、楽しんでいるな」としみじみと思いました。
誰の手も及ばない、広大な流れの上を一人、ぷかぷかとゆったりと下り、自由を謳歌してニコニコとしている。
アウトドアアクティビティを楽しむということは、本来はこういったことなのではないでしょうか。

業者に頼んだり、仲間と来たのでは、あんなに緩やかかで静かに自然を感じられないでしょうし、自由も失われることでしょう。
釣りなんかもそうですが、やはり自然を楽しむためには、一人で行動することが大切だと思います。
それで、多少危険が増したとしても、それ以上のかけがえのない自由が手に入るのですから。
広大な河の朝もやの中で、一人ぼっちの釣り人と、一人ぼっちのカヤック乗りの一瞬の邂逅に、アウトドア本来の楽しみを再認識させられる出来事でした。