飲んで寝ていただけで一日を終えた次の日。
そろそろ釣りに行きたくて仕方がなってきたが、昼間は暑いだけで、ここで動くのは、無駄に体力を消費するし、足の傷にも良くないので、あまり賢明ではない。
よって今日も、ひたすら涼しい部屋の中で昼寝をするだけだ。
湿度が低いからか、部屋の中は屋外とは別世界のように涼しいというより寒く、昼間でもかけ布団が欠かせない。
シーツを汚さないように、足元には適当に服を敷き、もう眠くなくなくても、ひたすら安静にしているよりない。
ルームメートは、一晩と午前中をひたすら寝たら、遠征の疲れから復活したらしく、ルアーのライトタックルを持って、歩いて下流へ出かけていった。
夕方になるまで、なかなか帰って来なかったが、一匹釣れたといって写真を見せてくれた。適当な写真の撮り方からしても、あまり大きくない魚のようだが、昼間にルアーでタイメンを釣っただけでも、最近の状況からしたら充分凄い。小さなクランクベイトのようなもので釣ったと言う。
この人は、とにかく釣れるまでやるタイプの人のようだ。
毎日、どの場所で、こう釣る、という目的があって、それが達成されるまでは、口数も少なく粘り続けるのだ。
僕は、「やる気のあって釣れる魚は一投で釣れるし、後の魚は無理に釣らなくてもいいか」という緩い釣りの考えの持ち主なので、この執念を少し見習ってみようかなぁ、とも思う。
しかし、それは今ではない気もする。いつかまた他の場所で釣りをする時でよい気がする。
そう思えてくるほど、この場所には、うんざりとし始めていた。
確かにに大きな魚の沢山いる、素晴らしい川には違いない。
しかし、いくら真面目に法律を守って釣りをしても、良いサイズの魚は釣れないのだ。
その一方で、毎日のように目の前で、ここでは書けない釣り方では、良いサイズの魚は釣られている。
これは、自分の釣りが下手なせいであるだろうし、気温が高かったり、水位が高いといった状況のせいでもあるかもしれない。
とにかく、やる気を無くさせるには充分な状況が揃っていて、この旅の失敗の可能性が大きくなってきていた。
夕方に、ちょっと焚き火に当たっていると、ハンサム君が相談をしてきた。
「自分達は、予定を早めて、明日には上流のキャンプに移動して、そこから地元の人を訪ねたり観光に行くけれど、良かったら一緒にどうだい?」
ということだ。寝ているばかりの僕を、気づかってくれているらしい。
彼らは、もう満足したから、釣りは今日で終了というわけである。
さすがに、まだ何日かあるのに釣りのチャンスを完全に放棄をするほど、僕の気持ちは死んではいなかったし、観光には全く興味がないので、「ちょっとでも釣りがしたいから」と断ることにした。