釣りにゃんだろう

猫のように気まぐれに 独断と偏見に満ちた釣り情報をお届け

武士道とチャイニーズスープ。

もう身体が干からびてしまうほどの、無駄に体力を消耗しただけの釣りから帰ってきて、早速涼しい部屋の中で昼寝をしようと思ったが、屋外のベンチで行われていた他の部屋のメンバーの酒盛りに誘われて、ついつい乗ってしまう。

 

炎天下の下、ビールとウォッカを交互に飲みながら、釣りから政治まで、様々な話題について話ながら、親睦を深めていった。
英語に堪能な優しい男が居たので、通訳のように間に入ってくれ、スムーズに会話をすることができる。

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一人が虎というタトゥーを入れていたので、「タイガーだね」と言うと、彼は他のメンバーに、「ほら、タイガーって意味だって言ってるだろ!」と嬉しそうに報告する。
しかし、報告されたメンバーは、「本当は、チャイニーズスープの名前じゃない
の?」、なんて冗談を言うので爆笑してしまった。

 

他にも、酒や女やカメラの話をして盛り上がるが、優しい男が「武士道というのは、何なんだろうか」という、難問をぶつけてきた。

 

「それは、説明が難しい質問だなぁ」と僕が言うと、「そうだろうね」と彼も同意する。

何しろ日本人の僕でも、武士道が何かなんて知らないし、新渡戸稲造の本を読んだこともない。
たとえ知っていたとしても、お互いにカタコト英語のこの状態で説明するのは、難しいだろう。

 

しかし、他のメンバーも気になっているらしく、何かしら説明しなくてはならない。

ここは、もう適当に、その場で思いつくままに説明してみることにした。酒の席なのだし、真面目な日本人の方々には許していただきたい。

「武士道とは、一人一人が信念を持っていて、それを守るためには、命をかけて、弱い者を助け、強い者には立ち向かうということだ」
というようなことを、苦し紛れに言った。

 

「なるほど、素晴しい。武士道にはマスターが居るのか?」
と優しい男は、さらに興味津々だ。

「武士道にはマスターは居ないよ。宗教ではなくて、一人一人が心の中に持っているものだよ」
と、答えてみる。

「素晴しい。日本人はそういったものを、無くしてはならないと思うよ」
と彼は言う。

「でも、残念ながら、今の日本には、もう武士はいないんだ」
誤解を生んではいけないので、正直に話しておく。

 

「どうしてなんだ?」と、彼は悲しそうに、聞くので「文化が、変わってしまったからじゃないかなぁ」と答えてみる。
「どうして変わってしまったんだ?」
と、まだ納得がいかないようなので、「やっぱり、アメリカの影響が大きいのじゃないのかなぁ」と言うと、「やっぱりアメリカか!」と納得してくれた様子で、今の会話の内容を一通り、他のメンバーに報告する。

なんだか、他のメンバーも、この苦し紛れの独断と偏見に満ちた説明を、とても納得してくれたようで、僕のグラスには、さらにウォッカが注がれ、酒盛りはさらに盛り上がることになった。

 

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そのまま飲み続け、夕方の4時に食堂で遅い昼御飯をもらい、その後にベッドで休んでいると、乾いた身体に酒を入れまくったのが悪かったのか、ひどい頭痛に襲われることになってしまった。

8時の夕御飯はとても食べられず、その後もルームメイトやハンサム君にしつこく釣りに誘われたものの、行く気にはなれなかった。

かなり気分が良くなってきた23時頃に、ルームメイトが帰ってきたが、デカイのを全員で3匹バラしたと興奮している。
結局、釣れなかったんだから、行かなくても良かった気もするし、それだけ反応がある絶好のチャンスを逃した気もする。

 

何にしても、今日は、釣れない釣りよりも、酒盛りをしている方が、ずっと楽しかったのだし、こういう体験はいつまでも心に残るのだから、今日一日は無駄ではなかったのだと、自分に言い聞かせながら、また眠りについた。