しっかりと睡眠をとって目覚めてみたものの、今日もルームメイトはなかなか起きない。
起きたと思ったら、コーヒーを飲もうと言い出し、食堂へ。
ついさっきまで、他の部屋の方々が飲み明かしていたらしく、テーブルの上には、酒の空瓶が散乱してい
る。
つまり、今朝釣りが出来る状態にあるのは、この二人だけだということだ。
なんだか、良いことがある予感がする。
コーヒーを飲んでいると、おばさんが起きてきてくれて、サンドイッチを作ってくれた。
ルームメイトは、しばし考えてから、ガイドを起こしに行き、何か交渉してから帰ってきた。
「今日は馬で行こう」
と、ルームメイトは言う。
さっきまで酒を飲んでいて、ようやく寝たところであろうガイドは、馬に鞍を載せたりして準備をしてくれる。
それから、僕を馬に乗せてくれ、僕たちのロッドを2本抱えて自分も馬に乗り、朝靄の出る草原を走り出した。
それに着いていかなければならないのだが、実は僕はほとんど馬に乗ったことがない。
ルームメイトの見よう見まねで、なんとか後を着いていく。
ウェーダーを履いて、朝の草原を馬で駆けるというのは、なんとも心地が良い。
しかし、朝からおばさんを起こしサンドイッチを作ってもらい、ガイドを起こし馬を出してもらい、馬にも僕を乗せて走ってもらい、たかが釣りのために、随分と他人や動物に厄介をかけていると思うと、「そこまでして釣りをしなくても良いのではないか」と思えてきてしまう。
そもそも、何10キロも進むわけではないので、日本で一人だったら普通に歩いていくような距離なのだ。
ちょっとお尻が痛くなってきた頃にポイントに到着した。
ガイドは馬を休めてから、連れてキャンプに帰るようだ。
そんなに冷え込んだわけではないのに、川面からは霧が立ち上っていて幻想的な雰囲気だ。
やはり水温が少し高いのだろうか。
ポイントは、モンゴルの川らしい、断崖に流れが当たり淵が出来ているようなところで、上から魚が見えるのだとルームメイトは言う。
かなり真剣に忍び足で、スイムベイトを落としてしゃくっているので、邪魔をしては悪いので、僕は少し歩いて、朝方に良さそうな瀬のポイントなどを釣ってみたりした。
14センチのミノーに、岸際から真っ黒な魚影が飛びかかってきた。
なんと、これが巨大なグレーリングなのだ。
少し明るくなってきてから確かめると、よく分かったのだが、岸沿いの流れの弛みやブッシュの影には、この魚が無数に泳いでいる。
それから、その外側に時折赤い尾びれの大きな魚が定位している。
しかし、その大きな魚達は何をしても反応しない。掛かってしまった小さめのグレーリングにも、興味が無いようで完全に無視だ。
釣れた状態の小魚には、フィッシュイーターは狂ったように反応することが多い
気がするのだが、どうしたものだろう。
ルームメイトは、まだ崖のポイントに執着している。
「かなり大きな魚がいるが、これではダメだ」と昨日も一日中していた、ここでは書けない釣りの方法に切り替えた(お察しください)。
それを続けても、何度か反応はするもののダメらしく、ようやく諦めて、少しずつキャンプの方向に移動していくことにした。
歩いているうちに、また崖沿いのポイントが現れて、ルームメイトが巨大な木製のトップウォータープラグを投げると、ドカン!とタイメンがヒットした。
このプラグは、前にも使っている人を見たことがあるのだが、スロバキアのハンドメイドプラグらしく、角材を連結したような見た目の、ジョイントタイプの素朴なポッパーといった感じで、日本人の目線からすると、とても釣れそうには見えない。
しかし、実際に釣れてしまうのだから、やはりルアーは見た目じゃないのだ。
釣れたのは、90センチほどのタイメンで、まあまあ良い魚だ。
そして、結果的には「昼間にルアーで釣る」という正攻法で釣れた、まともなサイズの魚は、これが最初で最後になるとは、僕はまだ思いもしなかった。
いつの間にか、気温が上がり、雲ひとつ無い晴天で、灼熱地獄になっている。
少し歩いては釣りをして、温泉に浸かるようにして川に入り身体を冷やしては、干からびそうになりながら、ゆっくりと進んで行く。
そして、若干ヘロヘロになり、それ以上の釣果もなくキャンプまで帰ってきた。
あれだけ大掛かりに人や馬に手伝ってもらって、太陽に焼かれて、二人で釣れたのは中型一匹なのだ。
これはもう、昼間に釣りをするのは、体力の無駄でしかないのかもしれないと、考えを固めることにした。

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