井伏鱒二の「川釣り」という本の中に、伊豆の河津川に鮎釣りに行ったら、夜中に川が溢れて宿が床上浸水してしまう話があります。
釣り具も流されてしまい、井伏鱒二は釣りをする気力を失ったような状態になるのですが、地元の名人は荒れ果てた川を見ながら、「あと15日もすればデカイのが釣れるぞ」と言うのです。
この話は、本当によく釣り人の気質をよく表しているなと、私は関心してしまいました。
町中で水害の被害が出ているでしょうし、名人だって何かしら困った状態になっていることでしょう。
しかし、こんな時でも釣りが本当に好きな人は、釣りのことを第一に考え、「この大水が引けば大物が釣れる状況になる」と水害さえもボジティブに捉えてしまうのです。
不謹慎極まりないのかもしれませんが、釣り人にはこういった「どんなに悲惨な状況でも釣りのことを考えて前向きになれる」というようなところがあると思います。
近い話だと、東北の津波の後なんかにも、いち早く釣りをして良い釣果を上げた人が結構いたと聞きます。
泣こうが笑おうがピンチはピンチで変わらないわけですし、それだったら釣りのことでも考えて、ちょっとでも前向きに生きていくのは、他人に迷惑さえかけなければ悪いことではないのではないでしょうか。
ピンチに強い人間になるためにも、釣りを覚えておいて損はないのかもしれません。
世間からは釣りバカと呼ばれるでしょうが、逞しく生きていけるなら、それだけでも儲けものでしょう。