私が子供の頃、ルアーのスズキ釣り(所謂シーバス釣り)で一番有名なフィールドは、静岡県の狩野川でした。
当時の狩野川では、コンスタントに1メートル以上のスズキが釣れていて、テレビや雑誌にはそんな大物が度々登場していました。
雑誌の投稿コーナーにも、狩野川での大物の釣果が溢れていましたし、実際に私が何度か親に連れていってもらった時にも、釣れている人の姿をちらほら見かけました。
ですから、当時は狩野川がスズキ釣りで日本一熱い川だったことは間違いないと思います。
さて、その頃から数十年が経った今、狩野川は以前のようにスズキの釣り場として盛り上がってはいないようです。
釣りをしている人はいるにはいるでしょうが、以前のように日本中から釣り人が集結してはいないようです。
10年近く前に、狩野川の近くを通った時にも、私が子供の頃と比べると、全然釣り人が居ないので驚いてしまいました。
それくらい、スズキの釣り場としての狩野川は人気がなくなったということなのでしょう。
では、なぜ人気がなくなってしまったのかと考えてみると、以前ほど大物が釣れなくなってしまったのが一番の原因なのではないかと、私は思います。
近頃は、ルアーでスズキを釣って持って帰る人はあまりいないかもしれませんが、当時は死んだ魚を持った人の写真が雑誌には沢山載っていたくらいですから、大物が釣れると持って帰る人が多かったようです。
大物の写真といったら、釣り具屋の前で死んだ魚を持って撮ったものが定番だったような時代でしたから。
こういった釣りをする人が、日本中から大挙して押し掛けていた結果、どうなってしまったでしょうか。
スズキは、日本の海に沢山居る魚で、珍しいものではありませんから、多少釣り人に持って帰られてしまっても、あまり問題はない気がします。
しかし、この川に入ってくるという習性を受け継いだ魚はスズキの中でもごく一部なわけで、あまりにキープされる魚が多いと、その種族が減ってしまい、狩野川に入ってくるスズキは激減してしまったかもしれません。
加えて、大きな魚というものは、遺伝的に大きくなりやすい性質を持った魚の子孫であることが多いらしいので、大物をどんどん持ちかえられてしまったら、そういった大物の家系は滅びてしまうでしょう。
このように考えてみれば、物凄い勢いでスズキが釣られ、大物がキープされまくった狩野川では、以前のように大物が沢山は釣れなくなってしまったと言えそうです。
このようなことは、狩野川のスズキだけでなく、日本中の釣り場でも起きていることだと思います。
たとえ珍しい種類の魚ではなくとも、その釣り場に居る習性を持った魚の数には限りがありますし、大物になりやすい家系の魚の数にも限りがあります。
釣り人は、このことを頭に入れて、注意して釣りをしないと、あっという間に「金を堀り尽くした」 状態になり、狩野川のように釣り場として終わってしまうと思います。