ある日、私がニジマスを釣ると、口からエサ釣りの真新しいハリスが伸びていました。
結構な太さのラインなのに、どうして切られてしまったのか不思議でしたが、フックは口の中にあったので、自分の引っ掛けたフライを外すついでに外しておきました。
しかし、その魚には、まだまだ釣られた跡があるのです。
顔の右側も左側も、口の周りがボロボロになっていて、少なくとも一回はルアーのトレブルフックで引っ掛けられたようです。
もしかしたら、二回釣られているかもしれないような傷つき方でもあります。
それも、傷の状態からみてみても、つい最近釣られたような感じなのです。
こういった様子を見てみると、この魚は少なくとも短期間に三回は釣られたことになります。
なんだか可哀想になってきてしまいますし、これでエサ・ルアー・フライと三種類の危険を知ったわけですから、「もう釣られるんじゃないよ」と逃がしたのですが、どうなるんでしょうかね。
どうも釣りというやつは、釣られやすい魚は何度も釣られて、釣られにくい魚はなかなか釣られない気がします。
ですから、またすぐに釣られちゃうんじゃないでしょうかね。
傷だらけでしたが元気だけはあるようで、矢のような速さで流れに戻っていったニジマスを見て、また釣られちゃうんだろうなぁと、なんだかやるせない気になったものでした。
自分で釣っておきながら、こんな気持ちになるなんて、おかしな話ですけどね。
釣りというやつは、自分で魚を傷つけておきながら、魚に愛情のようなものも感じてしまう、矛盾した不思議な感情を呼び起こすものです。