最近、釣り場で出会った青年が、私がカーディナル44を使っているのを見て、「ドラグが良いらしいですね」と言ってきました。
私は、それを聞いて、「いやいや、そんなことはないと思うよ。滑らかに滑り出すかだって、一定の力で出るかだって、微調整が効くかだって、今時の安いリールの方がずっと良いよ」
と答えました。
それから、「カーディナルのドラグが良い」だなんて、青年に吹聴した人は、一体どういうつもりで言ったのだろうか、と考えながら私は釣りをしていました。
良いところがあるとすれば。
そのままいくらか魚を釣っているうちに、カーディナルのドラグに良いところがあるとすれば、どんなところか、なんとか思いつくことができました。
この絶妙な位置に付いたリアドラグの良いところは、ドラグ力を感覚で調整しやすいところだと思います。
このリールのドラグのノブは、ドラグの絞まり具合いと上手く連動して、だんだんと回す感覚がキツくなっていきます。
手で感じるノブを締める抵抗の感覚とドラグ力が、だいたい一致しているのです。
これは、今時のフロントドラグのリールでも、同じようなことは言えるかもしれませんが、カーディナルの方がより感覚的にドラグを操作できる気がします。
今時のフロントドラグのリールだと、微調整が効きすぎて、カチカチカチカチとドラグノブを回しても、たいしてドラグ力が変わらず、そのうちにどれくら締めつけているのかという感覚が、よく分からなくなってしまうからでしょうか。
自分の感覚と連動させてドラグ力を変えることができると、ちょっと大きな魚が掛かったりして、ドラグをわずかに弛める時などに便利です。
また、水中の障害物に突っ込みそうになった魚を、ぐっとドラグを絞めて阻止したり、足元で暴れる魚を、すっとドラグを緩めて、ちょっと沖に走らせて弱らせたりといった操作を感覚的に行うことができます。
これが今時のフロントドラグのリールだと、カチカチカチカチとドラグノブを回しても、瞬時にはそんなにドラグ力は変わらないので、先ほど挙げたように魚の動きに瞬時に合わせてコントロールすることは難しいと思います。
そのうちに、どれくらいのドラグ力なのかよく分からなくなり、締めすぎたり弛めすぎたりして、失敗するかもしれません。
ですから、スムーズで微調整の効くフロントドラグのリールは、始めにきっちりと狙い通りのドラグ力にセットしておき、そこからはファイト中などには、あまり弄らないで使うべきものなのではないでしょうか。
一方でカーディナルのドラグは、大雑把なものですが、いつでも自分の感覚と連動させて、ドラグ力を変えることができるので、その調整でファイト中の危機を乗り切ることができます。
今時のフロントドラグがセットした力でしっかり作動する機械なら、カーディナルのリアドラグはリールを自分の体の一部として使うような感覚です。
このどちらが良いと思うのかは、好みの問題なのではないでしょうか。
いつでもきっちり正確にドラグが作動して欲しい人は、今時のフロントドラグを選ぶべきでしょうし、自分の勘や感覚を信じて釣りをしたい人は、カーディナルの方が良いのかもしれません。
私は、釣りそのものが非常に感覚的なものだと思いますし、あまりにも機械的なものは使わない方が楽しいと思います。
ですから、自分の感覚と連動して操作できるカーディナルのドラグは、とても優れたものだ言えると思います。