私は若い頃、ブランキージェットシティというバンドのファンでした。
今でも心の住所はブランキージェットシティだと思えるくらい、多大な影響を受けて育ってきました。
同じファンのお兄さんお姉さん達にお世話になりながら、ライヴで汗だくになって暴れていたあの頃、私は思っていました。
「大人になったら、みなさんと同じようにタトゥーを入れてバイクに跨がり、歌の歌詞にあるように『ドキドキするようなイカれた人生』を送るんだ」と。
しかし、時は流れてバンドは解散してしまい、拠り所を失ったまま少しずつ歳をとるにつれて、ドキドキするようなイカれた人生を送るには、かなりの覚悟と勇気がいることが分かってきました。
その結果、結局子供の頃に望んでいたようなイカした人生を送ることはできず、小さくまとまったつまらない人生を過ごすことになってしまいました。
まあ、誰でも人生なんてこんなものなのではないでしょうか。
それでも時々思い出したようにブランキージェットシティの曲を聞いては、今でも心が熱くなる感覚を覚えているわけですが、最近ふと思ったわけです。
「実は結構ドキドキするようなイカれた人生を送れてきたのかもしれないな。釣りのおかげで」と。
釣りに熱中しているうちに、自然と色んな所に行けて、色んな事ができ、普通では考えられないような体験をいくらでも経験できました。
夜明けの霧の中を馬に乗って釣りに行く。
毎朝、熊を追い払ってから釣りをする。
9月に雪に降られながらウォッカを飲み野営する。
様々な国の人達と焚き火を囲んで、山奥で何週間も暮らす。
誰もいない森の中で、鹿にギターを聞かせる。
ぱっと思い付く面白い体験を上げてみても、よくよく考えてみれば、世間一般から考えれば、充分イカれた経験ばかりじゃないでしょうか。
気づいてみれば、周りの古い友人達は、家と妻と子と年収1000万円前後を得ているのが普通になっています。
そうした普通の人生を送ってはこれなかったわけですが、代わりに私はかなりイカれた経験を沢山できている気がします。
そして、それらは全て釣りをしていたおかげで体験できたことなのです。
それから、時々思うのです。
もし自分に子供がいたら、他の父親達にはできないような面白い経験談を、どれだけ聞かせてやれることだろうかと。
もし、そういった話に、その子が興味を示すなら、「釣りをしてみれば良いんだよ」と教えられるでしょう。
「一生幸せでいたかったら、釣りをしなさい」という諺があるとかないとからしいですが、私だったらこう言うでしょう「一生イカれた人生を送りたかったら釣りをしろ」。