アブのカーディナルというインスプールのスピニングリールがあります。
このリールのシリーズの70年代に発売された最小サイズの33という物は、日本でそこそこ人気があり、今だに毎年のように色や仕様を変えて、復刻や限定生産が行われています。
このようなカーディナル33の復刻や限定生産の流れは、1992年頃に行われたのが最初でした。
当時の輸入代理店であったオリムピックが、アブ側に働きかけて行われたと見られています。
生産は日本の会社で行われ、スプールを乗せる程度をスウェーデンで行いスウェーデン製としていたのではないかと言われており、販売も日本国内だけだったと推測されています。
かなり品質に問題があり、正直失敗作だったのではないかと私は思いますが、その復刻のタイミングは完璧だったのではないでしょうか。
90年代の釣りブームが起こっている状態で、なおかつ70年代の一度目のルアーブームだった頃に、購買力がなくてアブのリールを買えなかったであろう年齢層の人々が、立派な大人になっているというタイミング。
「なんか最近釣りが流行ってるのかな、また釣りをしてみようかな」なんて思っている購買力のある大人達の前に、子供の頃欲しくても買えなかった憧れのリールが復刻されて現れたら、ついつい買ってしまったのではないでしょうか。
この時のオリムピックは、なんとも商売上手だったと言えるでしょう。
さて、このような復刻作戦を現在やるとしたら、一体どんなリールを出したら良いのでしょうか。
今から20年ほど前の釣り少年達が、買いたくても買えなかったリールということになるでしょうから、スピニングリールなら昔のステラとかでしょうか。
しかし、例えば「95ステラ復刻」と売られたとしても、一体誰が買うのでしょうか。
そんなリールをわざわざ高いお金を出して買うなら、ほとんどの人が現行のステラを買うはずでしょう。
このようなことを考えてみると、この30年ほどの日本のメーカー主導の元で売られてきたリールというものには、カーディナルのように時を越えても憧れを維持され続けるような魅力が無かったと言えるのではないでしょうか。
ころころとモデルチェンジをし、高性能ばかりを売りにしてきた結果、リールは長い年月愛されるような道具から、ただの味気ない機械に変わってしまったのでしょう。
企業が大きな利益を上げるためには、これしか方法が無かったのかもしれませんが、そんな味気ない機械で、自然の中で生き生きとした魚を釣るなんて、なんだかとてもミスマッチな気がしてしまうのは、私だけなのでしょうか。