私には、パスポートには入国記録がないのに、釣りをしたことがあるという国が2つあります。
川というものは、しばしば国境線を流れていたりするもので、そこを歩いて渡ったり、ボートで下ったりして釣りをしていると、ついつい他の国に入ってしまうということがあったからです。
当然、これはかなり危険なことですし、一歩間違えば国際問題になりかねません。
しかし、周りの人と釣りに夢中になるうちに、「まあ、釣りのためなら、これくらいの危険は仕方ないだろう」と、国を越えてきてしまいました。
こうして国境を越えてみると、意外と見張られてはいないのか、何事も起きないものだなと油断してしまいますし、難民なんかがいくつも国境を越えるのも、確かに不可能ではないのかもしれないなとも思わされます。
まあ、こんな油断が命とりになることもありそうですから、冒険はほどほどにしておきたいところですが、国境なんて意識しなければ、なんのこともないことだったりするのです。
フェンスもなければ、標識もなく、見渡す限り人の気配もありません。
魚も虫も鳥もムースも熊も自由に行き交っているのを見かけると、国境なんて本来は誰のものでもないはずの地球に、人間が勝手に架空の線を引いただけなのだと、よく分かります。
こんな幻のようなもののために、権利を主張したり争ったりする人間というものが、いかにバカらしいか、釣りをしていると心の底から実感できます。
そもそも地球は人間のものではないわけですし、地球上ではただの一種類の生き物でしかない人間の主義や主張に、どれほどの意味があるのでしょうか。
蟻がここは自分達の縄張りだと主張するのと、人間が国境を決めるのでは、地球規模で考えてみれば、何の変わりもないはずです。
人間なんてその程度のものなのに、好き勝手に争ったり、地球を壊そうとしているのですから、本当に困ったものです。
釣りをしていると、いかに人間が愚かなのか、いくらでも知ることができます。