アブガルシア製品のパッケージなどには、『Abu Garcia FOR LIFE』とデカデカと書かれていることが多いです。
なかなかインパクトもありカッコ良いコピーだと思うのですが、はたして本当に『FOR LIFE』なのでしょうか?
今回は主にリールについて、考えてみましょう。
『FOR LIFE』とは?
このコピーの『FOR LIFE』という意味は、『あなたの暮らしにアブガルシア』という意味ではありません。
『一生使える』という意味であり、『アブガルシアの製品はしっかりしているから一生物ですよ』というような自信とアピールを表しているものです。
このような点をアブガルシアがアピールする理由は、古くからアブの製品は丈夫で上質だというような認識が釣り人の間にはあったからでしょう。
それを利用して、現在でも商品をアピールして売らない手はないわけです。
有名な話としては、アンバサダーを水中に誤って落としてしまい、かなりの時間が経過してから引き揚げられたが、問題なく使えたというようなものがあり、アブの耐久性神話や迷信のようなものが古くはありました。
その頃からは、社名が変わったり、買収されたりしてしまったわけですが、変わらずに丈夫さをアピールし続けているわけです。
今でも『FOR LIFE』なのか?
確かに、古い時代のアブのリールというものは、シンプルで丈夫で、本当に一生使えるようなものでした。
私が現役で使っているリールなどでも、最初に買った人は死んでいる可能性が高いような物もゴロゴロとあるわけで、一生どころか子や孫の代まで使えてしまうものでした。
それでは、今現在のアブガルシアのリールも『FOR LIFE』なのかと見てみると、ちょっと無理があるんではないかなと思います。
部品を何度も交換したりすれば、一生使えないことはないかもしれませんが、一生使うには構造が複雑過ぎますし、耐久性のないようなリールが多いです。
これはアブガルシアのリールが特別悪いというわけではなく、今の時代のリールそのものが、一生使うことを想定していないものになっているからです。
ですから、古いモデルに使うならともかく、現在のモデルにまで『FOR LIFE』と書いてしまうのは、少しやり過ぎな気がします。
もっとも、本気で一つのリールを一生使ってやろうと思っている人は、現代ではあまりいないのでしょうから、本当に『FOR LIFE』でなくても、さほど問題にはならないのかもしれません。
Abuは好きだが、Abu Garciaは嫌い。
オールドタックルが好きな人の中には、「Abuは好きだが、Abu Garciaは嫌いだ」というような人がいます。
こういった人が出てくるのも、本当に『FOR LIFE』ではなくなったことが原因でもあります。
アブ社は、80年代に北米で販売を任していたガルシア社が潰れそうになったので買収して、アブガルシア社と名前を変更しました。
ちょうどこの頃から、その製品の耐久性が怪しくなっていったので、オールドタックルの愛好家達は、「Abuは好きだが、Abu Garciaは嫌いだ」と言うことがあるのです。
しかし、まあ今になって考えてみれば、製品の性格が変わっていってしまったのは時代の流れだったのでしょうし、その流れに乗らなければ今ではアブの名前さえも残っていなかったのかもしれません。
ですから、そう細かいことに目くじらを立てずに、各々が自分の気に入ったものを大切に使っていけば良いのではないかと思います。
このように『Abu Garcia FOR LIFE』というコピーは、現在ではちょっと怪しいものとなってしまっています。
それでもAbuと書いてあるだけでも少し魅力を感じてしまうのは、過去に良い物を作っていたと知っているからでしょうか。
しかし、これからはそういった事実を知らない世代の釣り人ばかりになっていくでしょう。
すでにアブガルシアがスウェーデンの会社だったと知らない人も、たくさん居るわけですから。
メインは中国製の、ちゃちなアメリカのリールのメーカーだと思っている若者もたくさん居ます。
こうなってくると、いよいよ『FOR LIFE』と謳うのは苦しくなってくると思うのですが、これからもデカデカと『Abu Garcia FOR LIFE』と記し続けるのでしょうか。