釣りにゃんだろう

猫のように気まぐれに 独断と偏見に満ちた釣り情報をお届け

夜釣りよ、今夜もありがとう。

「今日の夕方は釣りに行かないで、明日の朝早く釣りに行かないか?」
昼寝を終えて、夜8時に夕食を終えた後、ルームメイトがそう提案してきた。

夕方の釣りとは言っても、釣れるのは暗くなった10時過ぎで、ほぼ夜釣りだ。
夜釣りは、写真が撮りにくいし、日本では自粛が求められている川があるくらいイメージも悪い。
それに、今日の昼間は、かなり魚の反応があったので、なんだか昼間でもイケそうな気がしてきていたた。

 

僕は、喜んで賛成して、また眠りにつくことにした。
ルームメイトは、楽しそうに口笛を吹きながら、明日の釣りの準備を、ガサゴソと念入りにしている。釣りの準備をしている時が楽しいのは、万国共通なのだろうか。
小屋の外からは、発電機の音が聞こえてくるだけで、その音を子守唄にして、僕はうとうととし始めていた。

f:id:nyandaro:20180718124711j:plain


「ピー、ピー」
という口笛の音と、叫び声で、目を覚ました。
ちょっと遠くの方から聞こえてくる。

これは、何かが起きたに違いないと、カメラを持って部屋を飛び出す。

暗闇の中で、下流の方から口笛の音がする。
隣の部屋のメンバーも全員出てきて、その音がする方へ一斉に走り出す。

しかし、口笛の主も走って、どんどん進んで行っているようで、全然追いつく気配がない。
ラソンでもしたかのように、追いかける集団もバラけて、一人で暗闇の中を走ることになってしまう。

1キロ以上走って、ようやく川原にライトの灯りを発見した。
近づいてみると、一番にやってきたモンゴル人のガイドが魚を水中でケアしていて、釣り人はハンサム君である。
測ってみると、魚は115センチ。

 

f:id:nyandaro:20180718124633j:plain

続々と、後ろからもメンバーが駆けつけてきて、気づけば全員が集合していたが、魚を見ると、ハンサム君の父親と仲間以外は、さっさと帰ってしまった。

この他人が釣れた時の、冷たい態度というのは、ちょっと笑いだしそうになるほど面白い。
釣りをしていても、こういう場面は良くある。
自分の釣りを中断して、じっくり写真を撮ったりと付き合う日本人は、そうとうお人好しなのだろう。

 

 

「写真を頼むよ。いっぱい頼むよ」
と、ハンサム君の父親からも頼まれたので、僕はじっくりと写真を撮ったり、動画を撮ったりしてあげる。

このお父さんは、本当に息子想いで、釣りをしていても、いつでもライトタックルで、小物釣りしかしない。そして、息子にだけ大物釣りをさせるという、心の余裕の持ち主だ。
とにかく、息子に良い思いをさせてあげたい、という気持ちが、いつも行動に表れていて、見ていてほっこりとする。

無事に魚をリリースをして、撮った写真を見せてあげると、本人も父親もお仲間も、「良くやった、これは良いぞ」と喜んでくれる。

こういうことをしに、わざわざここまで来たわけではないのだけど、まあ人が喜んでくれるのだからいいか、と思いながら、僕は暗闇の中を、トボトボと一人で歩いて帰っていった。

部屋につくと、さっきは魚を見て一瞬で帰ってしまったルームメイトが、また釣具を、ガサゴソといじっている。
内心、燃え上がっているのだろうか。

さあ、明日だ、明日。
僕は、隣の部屋の釣れたお祝いのお祭り騒ぎを聞きながら、眠りについた。